接合・溶接技術Q&A / Q01-02-13

Q部分溶込み溶接では,板厚と同じのど厚を確保できませんが,JASS6で規定されている突合せ継手の部分溶込みは溶接は,具体的にどのような構造,部材の継手に適用されるのでしょうか。

部分溶込み溶接は,開先のルート部に不溶着部分が残ることを前提とした溶接であるので,完全溶込み溶接に比べて性能が劣り,溶接線と直角方向に引張力が作用する場合,および溶接線を軸とする曲げが作用する場合に適用することはできない。ただし,溶接部にせん断力のみが作用する場合には,のど断面に対して許容応力度を与えて使用を許している。なお,JASS61)では工事監理者の承認を受けたときのみ部分溶込み溶接を用いることができるとしている。

部分溶込み溶接を適用する場合,溶接方法の選択を考慮した開先形状(すなわち,開先深さ,開先角度)と溶接条件の管理によって,溶接部の品質や性能は左右される。開先深さは,有効のど厚を決める設計上基本的な寸法であり,溶接継手部の性能を示す要素であることは言うまでもない。開先角度は,溶接施工において初層部の溶込みに大きな影響を及ぼし,危惧される溶接欠陥(なし割れ)の発生を防止するためには,一般にビード幅(W)とビード高さ(H)の比(H/W)がサブマージアーク溶接の場合は1.0以下に,ガスシールドアーク溶接の場合もほぼ同様にすればよいと言われている。また,有効のど厚は,被覆アーク溶接やガスシールドアーク溶接で開先角度が60°未満のレ形・K形・V形・X形開先の場合,開先深さから3mmを減じた値とし,U形・J形・H形・両面J形開先の場合や開先角度が60°以上のレ形・K形・V形・X形開先の場合,およびサブマージアーク溶接の場合,開先深さの値としてよいことになっている。

部分溶込み溶接の継手は,突合せ継手・角継手・T継手に大別される。具体的な例として突合せ継手の場合,引張力が生じない柱部材と柱部材の継手部に,角継手の場合,箱形断面部材のスキンプレートのコーナー継手部に適用される。また,T継手の場合,(a)引張力が生じない十字形断面柱およびH形断面柱とベースプレートの継手部,(b)通しダイアフラム形式の十字形断面柱およびH形断面柱のシャーパネル部,(c)H形断面の柱梁取合い部水平スチフナーと柱ウェブの継手部,(d)部材が極厚化して強度上大きなすみ肉溶接を必要とし,おおむね脚長が14mm以上となる場合のブレース材と柱,梁材取合い部のガセットプレートの継手部,(e)クレーンガーダーに使用する大形I形断面梁の下フランジとウェブの継手部に適用される(図1)。

部材の極厚化や施工の簡素化・省力化が求められるなかで,先に述べたように部分溶込み溶接は,引張力,および曲げが作用する箇所には適用できない制限があり,もう少し積極的に適用できるような設計体系の見直しが必要とされている。具体的な例としては,引張力が生じる柱部材と柱部材の継手部に完全溶込み溶接ではなく,部分溶込み溶接を適用しようとする試みが検討されており,米国のAISC規準で引張力を受ける場合でも許容応力度が規定されているように,ある程度低い許容応力度で設計が許されてもよいと考えられる。

参考文献

1)(社)日本建築学会:建築工事標準仕様書JASS6鉄骨工事,pp.27,84―103

2)(社)日本建築学会:鉄骨工事技術指針―工場製作編,pp.357―359

3)(社)日本溶接協会 建設部会:改訂版 鉄骨溶接施工マニュアル,pp.92―93

〈中込 忠男〉

このQ&Aの分類

溶接継手の応力計算

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部分落込み溶接

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