- 接合・溶接技術Q&A / Q01-03-07
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Q溶接設計の中でも大きな位置を占めると思われる溶接継手設計では,どのようなことを考慮しなければならないでしょうか。
溶接設計で留意することは,溶接の長所を最大限に生かし,短所を極力抑えることである。溶接設計の基本的な事項としては,一般的に以下のことがあげられる 1) 。
1)所要な機能を有し,溶接性の良い材料を選定する。
2)最適な接合方法を選定する。
3)応力集中の回避または軽減
溶接構造物は剛であるため,できるだけ応力集中を避け,構造的に形状がかわる個所には溶接継手を設けない。
4)最適継手の配置
溶接継手はできる限り少なくなるように計画し,溶接継手の多数の集中を避ける。
5)溶着量の最少化を図る
溶着量の増加は,溶接変形や溶接欠陥のほか,コストも増えるため,可能な限り減らす。
溶接継手に対する諸規定として,JIS B 8265「圧力容器の構造―一般事項」2) では,溶接継手に関して次のような規定を設けているので留意しておく必要がある。
(1)隣接する長手継手間の距離
2個以上の長手溶接継手がある胴を組み立てる場合,隣接する胴の長手溶接継手の中心間距離を母材の厚い方の呼び厚さの5倍以上話す必要がある。しかし,周継手の交点部から,両側各100mmにわたり放射線透過試験を行い,これに合格すればこの限りでないとしている。
(2)突合せ溶接継手端面の食い違い
突合せ溶接継ぎ手端面の食い違いの許容値を,溶接継手の位置により,分類別に規定している。
(3)厚さが異なる部材の突合せ溶接継手
a.厚さが異なる部材の突合せ溶接で,表面の食い違いが,薄い方の母材厚さの1/4または3.2mmのいずれか小さい場合,テーパを設けることを規定している。
b.テーパ部は必要計算厚さを確保し,その長さ(l)は片側での厚さの差(Y)の3倍以上(l≧3Y)とする。
c.溶接継手の一部または全部を,テーパ部の一部または全部とすることができる。
JIS B 8266にも同様の規定があるほか,ASMEもUW-9で同様の規定がある。
参考文献
1)新版溶接・接合技術特論(溶接学会編)第4版,産報出版:第6章6.1ベッセル系構造物の設計2)JIS B 8265「圧力容器の構造 - 一般事項」,2003
〈片山 典彦 / 2012年改訂[全面改訂]〉