接合・溶接技術Q&A / Q01-04-10

Q比較的薄板の突合せ溶接での残留応力分布とそれに及ぼす溶接諸条件の影響を教えて下さい。

溶接残留応力分布は,いろいろな因子の影響を受ける。もっとも基本的な残留応力分布は,比較的薄板の周辺自由な突合せ溶接によるもので,図1は突合せ溶接継手の,(a)溶接線と直交する断面,および(b)溶接中央断面における溶接線方向応力σxおよび溶接線直角方向応力σyの分布を示したものである。溶接部近傍は溶接線方向に材料の降伏応力レベルの残留応力が生じ,直角方向の残留応力はそれに比べてかなり小さい。

その値が大きく,また一番問題となる溶接線方向残留応力の分布は,溶接線近傍でその材料の室温での降伏点レベルの引張応力となり,それに見合う形で溶接線から離れると圧縮応力となる。溶接線と直交する断面で見ると,溶接残留応力は溶接部近傍の収縮しようとする原因によって生じるため,残留応力分布は必ず自己平衡,すなわち引張応力の合力と圧縮応力の合力が釣り合わなければならない。残留応力分布を定性的に示すときも,必ずこの点を考慮しておかなければならない。

溶接残留応力分布を支配する要因は,

(1) 溶接の入熱に関係する要因

溶接法,溶接条件,熱効率,非溶着熱,溶接棒の種類,開先形状,溶接層数,隅肉寸法など

(2) 材料に関係する要因

材料の強度特性(降伏応力),線膨張係数,比熱,相変態温度・膨張量,力学的溶融温度など

(3) 溶接部の拘束状態に関係する因子

溶接部の寸法・形状,溶接位置,溶接順序,拘束材の形状・寸法など。

溶接線方向残留応力の分布では,図2に示すように,引張残留応力の大きさとその広がりが問題となり,

① 残留応力の大きさは,溶接入熱には依存せず,材料の室温での降伏応力にのみ依存する。溶接部の引張残留応力の大きさは降伏応力とほぼ等しい。

② 残留応力が引張りとなる領域の寸法は,溶接入熱に比例し,材料の降伏応力に反比例する。すなわち,溶接入熱が大きいほど残留応力の発生領域が広くなる。

溶接残留応力分布を概略決める方法については,参考文献1)に材料・溶接諸条件に応じて簡便に評価できる手法が提案されている。

参考文献

1)佐藤邦彦監修:溶接構造要覧,黒木出版,(1988)

〈豊田 政男〉

このQ&Aの分類

溶接残留応力

このQ&Aのキーワード

残留応力分布と溶接諸条件

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