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The Japan Welding Engineering Society

  

   

▼No.

Q01-04-15

 

▼小分類

溶接残留応力

 

▼キーワード

溶接残留応力の測定

 

 溶接技術教育シート
  (IIWシラバス)
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溶接残留応力はどのようにして測れるのですか。

  

  

溶接残留応力の測定には,大別して,試験体を切削した際に生じる弾性変形から推定する方法(破壊法)と,X線や光・磁気などに対する試験体の応答から推定する方法(非破壊法)がある。それらの主なものを表1にまとめる。非破壊法は主に実構造物での残留応力測定に適用されるが,溶接継手の材質不均一への注意が必要で,一般には取扱いの容易さと精度の面から歪みゲージを用いた破壊法が用いられる。ここでは破壊法を紹介する。非破壊法による残留応力測定については,岩田らの解説1)を参照されたい。

(1) 弛緩法による一次元,二次元残留応力測定

① 分割法

溶接残留応力は,溶接による熱膨張・収縮によって生じた塑性歪みの不均一分布に起因するので,溶接継手を塑性歪みの不均一がなくなるまで小片に分割すれば,残留応力はすべて解放される。この時の歪み変化Δεを歪みゲージなどで計測すると,弾性力学によって分割前に存在していた残留応力が求まる。

 

一次元残留応力場:σEΔε

(1)

 

二次元残留応力場:σx

E

(ΔεxνΔεy),

(1-ν2)

σy

E

(ΔεxνΔεy)

(2)

(1-ν2)

 

ここで,E:ヤング率,ν:ポアソン比

ΔεxΔεy:直行する二方向(x,y方向)の分割前後の歪み変化(上記の歪み変化には計測された符号を逆にして代入)。

② 逐次切削法2)

中心軸に対して対称な一次元残留応力分布を有する丸棒を考える。丸棒外周部の薄層を切削すると,その部分の残留応力が解放されて丸棒に長さ変化が生じるので,その長さ変化から外周部に存在していた残留応力σが推定できる。

 

(3)

 

ここで,A:丸棒の残存断面積

ΔA

:切削した断面積,

Δε

:薄層を切削したときの丸棒の歪み変化,

ε

:そのときまでの丸棒の全歪み変化(図1参照)

この方法は,図2のような一次元残留応力が板厚方向に変化している場合にも適用できる。板厚表面からdzずつ層を削除し,その都度裏面で生じる歪み変化を測定する。すると,板厚方向の任意の位置zでの長さ方向(x方向)の残留応力σは,梁理論より

 

(4)

 

③ 局部弛緩法2)

図3のような主応力σ1σ2の働く二次元残留応力場を考える。半径aの小孔をあけ,その中心からrの位置での主応力方向の歪み変化ΔεaΔεbを計測する。これより,σ1σ2が次式で求まる。

 

σ1=-

E

{(A1A2)Δεa+(A1A2)Δεb

2

(5)

σ2=-

E

{(A1A2)Δεa+(A1A2)Δεb

2

 

ここで,A1u/(1+ν)

A2u/{4u-3(1+ν)}

ur/a

(2) 厚板溶接部の三次元残留応力測定法

① 岩井らの方法3,4)

溶接線とそれに垂直な二方向から薄板試験片を切り出し,各々の切断前後の直歪みの変形ΔεxΔεy(板厚表裏面で測定)と,切り出した薄板に残留する直応力から,もとの溶接継手に残留する直応力σxσyの三次元分布を推定する手法が提案されている。

② 固有歪み法(上田らの方法)5,6)

残留応力の生成原因である固有歪みの不変性(溶接継手の切断前後で変化しない)を利用し,継手から切り出した薄板試験片から固有歪み分布を求め,それをもとの物体に与えて三次元解析することで残留応力分布を推定する手法である。

固有歪み{ε}と,それにより物体に生じる弾性歪み{ε}の間には次の関係が成立する。

 

{ε}=[H]{ε}

(6)

 

ここで,[H]は弾性応答マトリックスで,有限要素法を用いて計算できる。固有歪み{ε}が求まれば,応力{σ}は次式で計算される。

 

{σ}=[D]{ε}=[D][H]{ε}

(7)

 

ここで,[D]:弾性マトリックス。固有歪み{ε}は,物体から試料を切断したときの弾性歪みの変化{εm}から,残差固有歪みの二乗和を最小とする条件より,最確値として求める。

 

(8)

 

以上より,三次元残留応力の最確値を得る。

 

(9)

 

溶接線に沿って固有歪みが一様とみなせる平面歪み状態にあるときには,図4のように溶接線に垂直な薄板を切り出すだけで,固有歪みの最確値を推定できる手法が開発されている7)。本手法の厚板電子ビーム溶接継手,溶射材への適用例が参考文献8,9)に報告されている。


参考文献

1)岩田,小川:溶接学会誌,第64巻第6号,p.433,第64巻第7号,p.497,(1995)

2)渡邊,佐藤:溶接力学とその応用,(株)朝倉書店,p.332,(1995)

3)岩井,高橋,佐藤:溶接学会論文集,第3巻第1号,p.196,(1985)

4)岩井,高橋:溶接学会論文集,第4巻第1号,p.143,(1986)

5)上田,福田,谷川:日本造船学会論文集,第145号,p.203,(1979)

6)上田,中長,金,村川:溶接学会誌,第55巻第8号,p.458,(1986)

7)上田,金,梅国:溶接学会論文集,第3巻第3号,p.611,(1985)

8)上田,金,梅国:溶接学会論文集,第4巻第1号,p.138,(1986)

9)金,張,堀川:溶接学会論文集,第16巻第1号,p.82,(1998)

〈南 二三吉 / 2012年改訂[字句]〉