接合・溶接技術Q&A / Q01-04-16

Q溶接拘束応力とは何ですか。また,その大きさはどのような因子で決まるのか教えて下さい。

周辺自由な平板の突合せ溶接では,溶接線方向の残留応力は材料の室温の降伏応力程度に大きな値になるが,溶接線直交方向の残留応力はかなり小さい。しかし,骨組構造や板構造などの構造物での溶接継手では,1つの部材の溶接による収縮変形が周辺の部材によって拘束されることが多い。このような場合で,収縮変形(主に横収縮変形)が拘束されるために生じる応力を「拘束応力」と呼び,残留応力の一種ではあるが,通常の残留応力とは区別している。

厚板の初層溶接のような場合,収縮変形が拘束されることによって生じる応力は,断面積の小さな初層溶接部に集中し,溶接部には降伏応力を超える拘束応力が生じることもあり,溶接低温割れの原因となることがあるので注意が必要となる。図1に拘束状態が強い溶接継手の例を示すが,溶接継手の周りが順次固められて行くほど拘束が強くなる。通しリブやスティフナーが付けられた板で先にリブの取付けを行った後,板の突合せ溶接を行う場合,リブ側のすみ肉溶接などを突合せ部溶接部のみ残しておく(溶接まて)のは拘束の程度を小さくするためである。

溶接継手の拘束の状態は様々であるが,横収縮が拘束される状態は,図2に示すような両端を剛性壁に固定された継手として基本的にモデル化できる。拘束の強さは,溶接部が収縮しようとしたときに母材がどの程度変形してくれるかによって決まる。溶接開先部に単位長さの収縮変形を与えるのに必要な力を拘束力と呼び,それを溶接のど厚で割ったものが(平均)拘束応力swとなる。図2のようなモデルの場合,拘束応力は,母材の板厚h,固定端までの距離lとすると,

 

σwmEh/lE:縦弾性係数)

 

で与えられ,

 

RFEh/l

 

は拘束の程度を表す指標として「拘束度(Restraint Factor)」と呼ばれている1)。このように,母材の板厚が厚くなるほど,また,拘束される距離が短くなるほど,拘束の程度が大きくなり,溶接部に生じる拘束応力の大きさも大きくなる。図32)には,いくつかの鋼種に対する拘束応力と拘束度の関係を示してあり,拘束度が大きくなると溶接金属部は引張りの塑性変形さえ生じることになる。

参考文献

1)佐藤邦彦,松井繁朋:溶接学会誌,Vol.36,No.10,(1967)

2)K.Satoh:Int.Conf.on Residual Stresses in Welded Construction and Their Effects,London,(1977)

〈豊田 政男〉

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溶接拘束応力

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拘束応力と拘束度

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