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The Japan Welding Engineering Society

  

   

▼No.

Q01-04-20

 

▼小分類

溶接残留応力の影響

 

▼キーワード

疲労強度向上

 

 溶接技術教育シート
  (IIWシラバス)
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残留応力は疲労強度を低下させますか。疲労強度向上のための残留応力から見た対策はありますか。

  

  

疲労強度は平均応力(繰返し最大応力と最小応力の平均)の影響を受け,引張りの残留応力は平均応力を増大させるのと同じ効果があって,疲労強度を低下させる。逆に圧縮の残留応力は疲労強度を向上させる。

疲労破壊過程はき裂の発生過程と進展過程に大別され,残留応力は主としてき裂の進展過程に大きな影響を及ぼす。疲労き裂進展の機構は正の応力によるき裂端の塑性すべりに伴うき裂の開口(鈍化)と逆方向の応力によるき裂端の再鋭化,次の繰返し応力による新たな塑性すべり,の繰返しによるもので,破面にはストライエーションと呼ばれる縞状の模様を形成する。き裂端に新たな塑性すべりが起こらない限りき裂は進展しない。き裂先端の局部的な塑性変形,破面粗さ,腐食生成物などの影響で作用応力が正であってもき裂は閉口する。き裂が口を閉じている間の応力の変動はき裂端に塑性すべりを起こし得ず,き裂進展に寄与しない。したがってき裂の開閉口が疲労き裂進展に大きな影響を与える。平均応力が高いほどき裂の閉口は起こりにくくなり,引張りの残留応力はき裂を開口させる。図1は試験片縦方向ビードの存在により疲労強度が大きく低下することを示した実験結果である1)

圧縮の残留応力はき裂を閉口させ,き裂の進展を抑制して疲労強度を向上させる。ショットピーニングによる疲労強度の改善はその典型的な例である。表面下50~100μmの深さにピークを持つ圧縮残留応力が疲労強度を著しく改善する(図2)2)。表面の焼入れ,窒化などの表面処理による疲労強度の改善もこの圧縮の残留応力に起因する場合が多い。


参考文献

1)V.I.Trufyakov:British Welding Journal,Vol.5,No.11,p.491,(1958)

2)三林,相原,宮田:日本機械学会論文集,Vol.61,No.586,p.1172,(1995)

〈宮田 隆司 / 2012年改訂[字句]〉