- 接合・溶接技術Q&A / Q02-01-01
-
Q中厚板(20mm以下)炭素鋼のレーザ切断メリットはどのようなものが考えられますか。
近年,中厚板(20mm以下)の炭素鋼の切断に高出力のCO2レーザが用いられることが多くなっている。CO2レーザが用いられるのは,高出力で,かつ,発振効率が高く,また,切断に適したレーザビームが得られるからである。図1に,CO2レーザによる炭素鋼の切断能力の一例を示す。以下,CO2レーザによる中厚板の炭素鋼切断のメリットを記す。
(1) 切断の高速化
図2に,炭素鋼の熱切断に用いられているガス切断,プラズマ切断およびレーザ切断の切断速度能力の一例を示す。この図から,レーザ切断の切断速度は,プラズマ切断よりは遅いが,ガス切断に較べてはるかに速いということがわかる。特に,レーザ切断の適用は薄板に対して非常に有効であるといえる。
(2) 切断変形の抑制
図3に,切断の熱変形の測定例を示す。この図からは,ガス切断が熱変形の最も大きな切断法であり,レーザ切断が最も熱変形の少ない切断法といえる。これは,レーザ切断が他の切断法に較べてはるかに高いエネルギ密度をもった切断法で,その結果,切断溝幅を狭くすること(図4参照)が可能となるためである。すなわち,切断部に供給される熱量が他の切断法より小さくなるため,熱変形が小さくなるのである。
また,形切断の場合は,この狭い切断溝幅が切断部材の変形の抑制に働く。このことも,結果的に,切断変形を抑制することになる。
(3) 歩留り率の向上
(2)でも述べたように,レーザ切断の切断溝幅は非常に狭く,中厚板(20mm以下)炭素鋼の切断の場合,おおよそ0.6~0.8mm程度である。これに対して,ガス切断は,おおよそ1~1.4㎜程度,プラズマ切断はおおよそ3.5~5.0mm程度である。切断溝幅単独で比較すれば,それほどでもないように思われるが,切断部材の数が多くなると,この効果は無視できなくなる。
(4) 自動化・省力化の推進
切断の自動化・省力化の推進を考える場合,切断のNC化は必須事項となる。当然,ガス切断,プラズマ切断及びレーザ切断もNC化が行われているが,特に,ガス切断では,まだ,現場作業者の技能に頼る部分が多くある。一方,レーザ切断の場合,レーザ出力の電気的制御が容易であり,精密な切断条件の設定が非常に容易となる。レーザ切断は切断のNC化に最も適した切断法といえる。
参考文献
1)上野等:レーザ切断機のパワーアップと高速化の現状,(社)溶接学会関西支部平成9年度シンポジウム資料,(平成10年3月20日)2)新版接合技術総覧編集委員会:新版接合技術総覧,(株)産業技術サービスセンター,P.530,(1994)
〈藤井 俊英 / 2012年改訂[一部修正]〉