- 接合・溶接技術Q&A / Q02-01-02
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Q炭素鋼の熱切断において熱変形は生じますか。また,変形量の推定ができますか。
切断溝近傍は熱切断時の加熱で熱膨張する。しかし,ここより離れた低温側の拘束のため,この熱膨張が抑えられ,切断部溝近傍には圧縮の塑性変形が発生する。この塑性変形部は温度の低下とともに収縮するので,一般に切断前よりも切断長が短くなるような熱変形となって現れる。
図1に切断過程の切断材の変形の過程を示す。熱切断法における一般的な熱変形は,ガス切断,プラズマ切断,レーザ切断の順に小さくなる。
熱変形の防止策としては,
① 切断部を水冷する。
② 切断部材を仮付け溶接等で拘束する。
③ 形切断を行う場合は,最長切断辺が,最終切断辺として残材側にくるような切断経路をとる(残材による切断部材の拘束を利用する。)。
④ ピアシング切断を行い,切断変形を切幅内に抑え込む。
⑤ 必要に応じて,切断経路に末切断部(ブリッヂ)設け,切断部材を拘束する。
等が考えられている。
熱切断時に発生する熱変形は,切断部に与えられる熱量,切断部材の拘束状態,切断部材の内部に存在する製鋼時の残留応力等によって変化する。このことが,切断の熱変形の解析を困難にしている。しかし,実際の切断作業現場では,熟練作業者が切断後の変形を予測して切断を行っているのも事実である(縮み代を考慮して,あらかじめ切断寸法を大きくしている等)。
現在,この方面の研究も始められており,将来,熱切断の変形予測も可能となるかもしれない。
参考文献
1)中西実.丸尾大:現代溶接技術大系第10巻―炎加工,熱切断,産報出版(株),(1980)〈藤井 俊英 / 2012年改訂[一部修正]〉