接合・溶接技術Q&A / Q02-01-17

Qインバータ型直流溶接機は,従来の直流溶接機と比較すると異なる点が多いようですが,メンテナンスについて教えて下さい。

(1) インバータ型直流溶接機の内部構成

インバータ型直流溶接機のメンテナンスを考えるに当たって,理解を容易にするため,まず同じ直流溶接機のサイリスタ型と主回路の構成を比較してみる。

図1に示すようにインバータ型直流溶接機は,溶接電源トランスの一次側で一度直流に整流し,トランジスタを用いて高周波に変換し,出力の制御も行っている。したがって,サイリスタ型の一次側が単純であるのに比べ,インバータ型の一次側は複雑な上,入力電圧のかかる部品や半導体素子も多く,さらに大容量のコンデンサが存在している。

メンテナンスに当たっては,この一次側の部品点数が非常に多いことを,十分念頭に入れて置くことが大切である。

(2) メンテナンスの実施例

インバータ型直流溶接機を,多数使用している造船所におけるメンテナンスの実施例について,以下に述べるので参考にされたい。

① 溶接作業者の役割

溶接作業者は溶接機二次側の以下の項目について,日常点検を行う。

●溶接機の二次側端子板におけるキャプタイヤケーブル端子の接触状態

●母材側(アース側)キャプタイヤケーブルの接触状態

●開閉器使用時開閉器内でのヒューズ,電源の接触状態

② 保全担当者の役割

保全担当者は6カ月程度の間隔で,以下の項目について定期点検を行う。

●溶接電源と一次ケーブル接続部の接触状態ならびに絶縁状態

●溶接機電源本体の接触線の接続状態

●高圧電解コンデンサの取替え(6カ月ごとの定期点検時ごとに取り替える必要はないが,約5年程度の寿命と考え,期間を定め更新する)

●半導体類の部品が多い電源内部にはホコリは禁物である。乾いた圧縮空気を吹き付けるなどの清掃を行う。

③ 修理について

インバータ電源の修理は難しいので,溶接機のメーカーサイドに原則として依頼するのがよい。まれにサーキットプロテクトがトリップすることがあるが,電源内部の故障と考え,同様にメーカーサイドに依頼する。

参考文献

1)(社)日本溶接協会 船舶・鉄構海洋構造物部会溶接施工委員会:溶接施工“Q&A”,p.94,(平成3年3月)

〈飯塚 真平〉

このQ&Aの分類

溶接機器の準備・保全

このQ&Aのキーワード

インバータ型直流溶接機

Q&Aカテゴリ一一覧