接合・溶接技術Q&A / Q02-03-08

Q2.25Cr-1Mo鋼製脱硫反応塔圧力容器で,耐食性を向上させるため内面にオーステナイト系ステンレス鋼を肉盛溶接することとしましたが,施工上の注意事項について教えて下さい。

質問の場合の肉盛溶接材料には,初層にType309,2層目以降にType347が適用されることが多い。これらの肉盛溶接施工における注意事項は以下に記す通り,施工時および使用時の問題に分けられる。

(1) 施工時の問題その1:凝固割れ

初層309の溶接では,母材との希釈に留意する必要がある。すなわち,母材溶込みが過大となり溶接金属中のデルタフェライト量が1%以下となると高温割れ発生の可能性がある。この防止のためには溶接条件の適正化が必要である。

(2) 施工時の問題その2:溶接後熱処理によるぜい化

肉盛溶接金属中のデルタフェライトは,溶接後熱処理によりシグマ相を析出させる。そのため,溶接後熱処理が不適切(過剰な高温・長時間処理)であると,肉盛溶接金属中のデルタフェライトがシグマ相に変態し,シグマぜい化が生じ延性が著しく低下する1)。さらに,シグマぜい化が生じた肉盛金属は水素ぜい化感受性も高くなる2)。シグマぜい化防止のためには,過度な高温,長時間となる溶接後熱処理を避けること,溶接材料成分中のフェライト生成元素(Cr,Nbなど)量を制御することが必要である。

(3) 使用中の問題:ディスボンディング

高温,高圧水素環境で操業の後Shut Downした際に,ボンド部近傍の肉盛金属中に剥離割れ(ディスボンディング)が発見される場合がある。この割れは,水素によるぜい化と冷却時の熱応力によるものである。溶接施工法が剥離割れ感受性に及ぼす影響については多くの報告がなされているが,必ずしも見解は統一的でなく3)個別に検討すべきであろう。

参考文献

1)内木ほか:石川島播磨技報,Vol.12,No.4,p.378,(1972)

2)高橋ほか:溶接学会講演概要,Vol.29,p.128,(1981)

3)安田ほか:溶接学会誌,Vol.54,p.438,(1985)

〈結城 正弘 / 2012年改訂[図SI単位]〉

このQ&Aの分類

ステンレス鋼

このQ&Aのキーワード

異種材料の溶接

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