接合・溶接技術Q&A / Q02-03-13

Qアルミニウム合金の種類と特色について教えて下さい。

アルミニウム合金は,金属学的に分類すると熱処理合金と非熱処理合金に分類できる。非熱処理合金は熱処理すると軟化し,時効硬化は生じない。しかし,冷間加工によって加工硬化が生じ強度が上昇し,伸びは減少する。非熱処理合金は,焼なまし状態あるいは加工硬化状態で使用する。

熱処理合金はアルミニウム中に常温では固溶限界以上となる合金元素を添加し,高温で充分固溶させた後冷却し,時間とともに微細な金属間化合物を析出させ,強度を増大させた材料である。

熱処理合金は,焼入れ,また,焼入れ焼戻しの状態で使用する。それぞれに属する合金系は図1の通りである。

(1) 母材の系統別諸性質

非熱処理合金は,一般に耐食性および溶接性が優れている。純アルミニウム(1000系)は強度が小さいので,耐食性や加工性が重要となる化学薬品タンクに適している。Al-Mg系合金(5000系)は,軟質の状態でも比較的強度が高く,溶接継手効率も100%がとれ,低温特性に優れているので,圧力容器,車両,船舶,建材をはじめLNG用低温タンクなど,溶接構造物に最も多く使用されている。注意を要するのは,Mgを3.5%以上含有するAl-Mg合金では,約65℃以上の高温で応力腐食割れ(SCC)発生のおそれがあり,使用が制限される。

熱処理合金は,非熱処理合金と比較して一般に強度は高いが,耐食性や溶接性が劣る場合が多い。熱処理合金の中でAl-Mg-Si系(6000系)およびAl-Zn系(7000系)のうちのAl-Zn-Mg合金は比較的耐食性,溶接性が良好であるため,車両,建築などの溶接構造物に使用される場合がある。一方,Al-Cu系合金(2000系)とAl-Zn-Mg-Cu系合金(7000系)は高張力鋼に匹敵する強度を持つものもあるが,耐食性が悪く,溶接も困難なものが多い。ただし,Al-Cu系のうち2219合金は例外的に溶接性,耐SCC性,高温強度,低温じん性などが良いこともあって,ロケットなど航空宇宙関連溶接構造物に使用されている。

(2) アルミニウム合金は,低合金およびステンレス鋼と比べ融点,線膨張係数,化学的活性度などが異なるが,それらがアルミ合金の溶接性に大きな影響を与える。それらの主な点を列挙すると以下のとおりである。

① 溶融温度と熱容量

アルミ合金は融点が低く,溶融しやすいように考えられるが,アルミ合金の比熱および溶融潜熱は他の大多数の金属よりも大きく,熱伝導の良いこととあいまって,鋼の5倍も熱が逃げやすいので局部加熱が難しく,溶融させるためには多量の熱を供給する必要がある。

② 酸素と親和力

アルミ合金は酸素と化合しやすく,空気中では短時間で酸化膜を生成し,溶接に際して母材と溶加材との融合を妨げる。

③ ガス吸収

溶融したアルミ合金は水素の溶解度が大きく,凝固時にブローホール生成の源となりやすい。

④ 熱による膨張,収縮

膨張係数が大きく(鋼の2倍),凝固収縮率も大きいので,一般に溶接による変形を生じやすい。また,合金によっては凝固割れを発生しやすい。したがって,これらの項目が凝固組織,割れ発生,ブローホール発生などに影響を与える。

(3) 熱影響部(HAZ)

非熱処理合金(加工軟化材)のHAZの硬さの変化を模式的に示すと図2のようになる。加工硬化材では,溶接熱により250℃以上に加熱されたところから回復し,ポリゴン化,再結晶(著しい変形を受けた金属を加熱したときに,結晶の再配列が生ずること)および粒成長による軟化が起こる。軟化域の幅は,加工度が高いほど,溶接入熱が大きいほど広くなる。なお,焼なまし軟質材の場合には溶接熱による硬さの変化はほとんど生じない。

熱処理合金のHAZの硬さ分布は,図3に示すようにそれぞれの組織変化に対応して変化する。すなわち,固溶域は温度が430~530℃の固溶化温度以上に加熱されたため,析出物の再固溶を起こした部分で,粒は粗大化している。次いで,過時効域は析出過度または部分的焼なましにより,最も軟化した部分であるHAZの軟化は合金の種類と溶接入熱により変化する。

なお,熱処理合金のうちAl-Zn-Mg合金は常温時効性が大きく,30日程度の自然時効で硬さが回復するのが特徴である。

参考文献

1)Handbook of Aluminium, ALCAN,(1981)

〈渡邊 竹春〉

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アルミニウム合金

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