接合・溶接技術Q&A / Q02-03-17

Qチタン・ジルコニウムの溶接において,溶接作業環境はいかにあるべきか,工場溶接(Shop Welding)および現場溶接(Field Welding)のそれぞれの観点から教えて下さい。その場合,風,湿度,塵埃(とくに鉄粉の多少)および溶接姿勢に至る作業環境要因別に教えて下さい。

チタン・チタン合金は,活性な金属のため,侵入型元素(酸素,窒素,水素,炭素)による汚れで脆化する。特に,溶接中に大気中の酸素,窒素などのガスと反応すると,溶接金属は著しく硬さを増し,伸びを減少して脆くなる。

また,その溶接作業環境が鉄粉,粉塵等で汚染されていると,ブローホールの発生など溶接品質の低下を招くことになる。したがって,工場溶接および現場溶接では,つぎに述べるような注意が必要である。

(1) 工場溶接(Shop welding)

① 溶接作業場を衝立等で囲い,溶接時のシールドガスを乱すような風が進入しないように遮蔽を行う。

② 溶接中に鉄粉やグラインダー等の塵埃が進入しないように,また油膜などで汚染されないよう専用の溶接作業場で溶接を行う。

顧客によっては,作業環境における鉄粉の有無をチェックするため,フェロキシルテスト(フェロシアン化カリウムとフェリシアン化カリウムの混合液,鉄粉が表面に存在すると青色に変色する。)などの実施を要求されることがある。

また,専用溶接作業場では,さらに専用で清潔な作業服,溶接用手袋(軍手を含む)および作業靴を使用しなければならない。

③ 湿度は,チタン・ジルコニウムの溶接に最も悪い影響を与えるので,溶接部が結露しないように作業場の管理を行う。

④ 現場溶接を伴う工事では,現地での溶接ができるだけ少なくかつ容易になるよう,工場溶接では可能な限り,ポジショナなどを使用して下向溶接で健全な溶接を実施しておかねばならない。

(2) 現場溶接(Field welding)

現場溶接についても,工場溶接と同じ作業環境にして溶接を行うのが基本作業であり,工場溶接と異なるのは,自然条件下での溶接作業になるので,つぎのように風雨等の対策を講じて溶接する必要がある。

① 溶接部に,風雨が進入しないよう衝立,ビニールシート,ベニヤ板などで囲い風雨対策を行う。

② 雨や結露などで濡れた場合には,ウエス等で水分を抜き取り,圧搾空気,ドライヤーで溶接部の水分を十分に乾燥させてから溶接を行う。

ガスバーナーでの乾燥は局部的に高温になりやすく,また,材料表面が酸化,窒化するので,その使用は避ける。

③ 溶接作業中に研削を必要とするときは,ロータリカッターを用いる。

やむを得ずグラインダー等の研削が必要の場合は,グラインダー等の塵埃が進入しないように衝立等で囲う必要がある。できるだけ粉塵が発生する作業は行わない。

④ 溶接材料は風雨,粉塵等の影響のない場所に保管し,使用する場合には常にポリ容器,ビニール袋などに保管し,使用する時に必要量のみを取り出して使用する。

⑤ 工場溶接の④項で述べたように環境条件の悪い現場溶接では,それでなくても工場溶接と同等の溶接品質を期待することが困難である。特にチタン・ジルコニウムのような耐食材料の場合不健全な溶接で生じた微細な欠陥でも,当該機器使用中に致命的な事故を起こしかねないので,現場溶接量(特に困難な溶接姿勢で実施する溶接)は極力少なくするよう予め計画しておくことが必要である。

〈長谷 泰治〉

このQ&Aの分類

チタン・ジルコニウムとその合金の溶接

このQ&Aのキーワード

溶接作業環境材質:チタン・ジルコニウム

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