接合・溶接技術Q&A / Q02-04-01

Q産業機械に使われている硬化肉盛溶接部の補修方法のポイントを教えて下さい。

溶接による硬化肉盛の目的は,建設機械や発電機等に代表される各種産業機械の耐摩耗の要求される部位に耐摩耗性に優れた肉盛金属を形成することである。

機械を運転した後,摩耗した部品は交換あるいは補修が必要である。一般的に摩耗の程度が大きい場合は部品を交換せざるを得ないが,機器メンテナンスの経済的理由から,摩耗量の少ない場合は肉盛溶接にて補修して再利用する場合が多い。

補修方法は基本的に新品の母材への肉盛溶接と同じ施工方法をとるが,運転した後,当該部には割れや表面に凹凸がある場合が多く,施工においては次のような注意が必要である。

(1) 母材に欠陥があると内部欠陥として残り,思わぬ事故の発生につながる恐れがあり,割れのある母材は肉盛前に完全に欠陥を取り除いておく必要がある。

(2) 母材に凹凸がある場合,手溶接や半自動溶接では問題無いが,自動溶接の場合,あらかじめ切削加工するか,凹み部のみ手動で肉盛材を下盛りしてから自動溶接するとよい。

(3) 肉盛溶接は下向き姿勢で溶着速度を増大させ母材への希釈を最小限とすることを基本とし,補修溶接の場合でも母材成分による希釈を考慮して施工する必要がある。

例えば,硬化肉盛用フラックス入りワイヤを用いた炭酸ガスアーク溶接で,母材が軟鋼の場合と中炭素鋼の場合とで,図1に示すように1,2層では大きく硬さが異なる1)。即ち1層目では母材がS45Cの場合,母材の炭素の影響で目標の硬さのHV350より高いが,軟鋼の場合では低く,母材の影響がなくなるのは3層目以降となる。この為,補修する場合においても(2)項の下盛を含めた3層以上の多層溶接が有効である。

(4) 運転後の肉盛補修は機器寸法が所要の形状に仕上った後の補修であり,溶接および溶接後熱処理(PWHT)で変形させない処置をとる必要がある。溶接は極力加熱炉中での作業とし予熱の均一化を図るとともに,PWHTでは拘束を強固にした状態で行う必要がある。また,その際,使用炉は仕上がり面が酸化しないように真空炉もしくは不活性ガス置換炉で行うのが望ましい。

参考文献

1)(社)溶接学会編:溶接・接合便覧,丸善(株),p.697,(平成2年9月30日)

〈石村 哲朗〉

このQ&Aの分類

肉盛溶接

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補修方法製品名:産業機械全般

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