接合・溶接技術Q&A / Q02-04-02

Q肉盛溶接における希釈率の説明と,各種肉盛溶接法の溶着速度と希釈率について教えて下さい。

肉盛溶接には,機械部品の表面に耐摩耗性の合金を溶接する硬化肉盛溶接法,石油化学工業や原子力工業などの分野において使用される圧力容器などにおいて炭素鋼母材の表面に耐食性合金を肉盛溶接する施工法などがある。

肉盛溶接においては,その施工目的に沿った溶着金属が得られる化学成分の溶接材が使用されるが,実際の肉盛溶接の場合,図1に示すように溶着金属は母材表面を溶け込ませるので,溶接材の合金成分が母材の合金成分より多い場合,溶着金属の合金成分は溶け込んだ母材により薄められ,溶接材の合金成分よりも少なくなる。この薄められる現象を希釈と言い,その度合いを希釈率で表す。なお,希釈率は溶込率とも言われている。

図1の式は溶着金属のある合金元素量と希釈率を算出する計算式である。

例えば,軟鋼板の母材に対し18Cr-8Niステンレス鋼溶接棒で肉盛溶接する場合,希釈率が30%であれば一層目溶着金属のCrとNrの量はそれぞれ次のようになる。

 

[Cr]=18×0.7+0×0.3=12.7(%)

[Ni]=8×0.7+0×0.3=5.6(%)

 

肉盛溶接では,母材による希釈を少なくするために溶込みの少ない溶接法を採用するのが望ましいが,溶着速度(量)との兼ね合いで施工法が決められる。

目的により各種溶接法が適用されており,表1に各種肉盛溶接法特性比較を示す1)

例えば,酸素アセチレン溶接(ガス溶接)は希釈が最も少ないが,極めて溶着速度が低くかつ熟練した技量が必要とされるため,現在ではステライト系などの特殊な肉盛溶接に適用されている程度である。一般には多層肉盛溶接により希釈の影響を低減する施工法で行われており,被覆アーク溶接,自動ティグ溶接,ミグ溶接,プラズマアーク溶接,サブマージアーク溶接,等が適用されている。

近年,圧力容器材へのステンレスライニング溶接など広範な面に肉盛をする高能率溶接方法として,厚0.4mm×幅,最大150mmのバンドフープ溶接材を用いる帯状電極肉盛溶接法が実用化されている。

この方法にはアーク熱によってフープを溶融するサブマージアーク溶接法(SAW法)と溶融スラグの抵抗熱によってフープを溶融するエレクトロスラグ溶接法(ESW法)がある。

エレクトロスラグ溶接法では母材の溶込みが少なく,希釈の影響が少ないので単層(厚5mm程度)で耐食性に優れた溶着金属を得ることができる。図2に帯状電極肉盛溶接法の概念を示す2)

参考文献

1)(社)溶接学会編:溶接便覧(改訂3版),丸善(株),p.492

2)神鋼溶接総合カタログ(’98年版),p.310

〈緑川 正和〉

このQ&Aの分類

肉盛溶接

このQ&Aのキーワード

溶着速度と希釈率

Q&Aカテゴリ一一覧