接合・溶接技術Q&A / Q02-04-05

Q破砕機(セメント,石炭,鉱石等)の表面硬化肉盛溶接(ロックウェル硬度HCR=60)の施工法について教えて下さい。

セメント,石炭,鉱石等は,それぞれ必要とする適正粒度まで細かく破砕する必要があり,破砕機の回転テーブルライナ上で回転ロールによって粉砕される。したがって,回転ロールとテーブルライナが破砕機の主要部品であり,その摩耗寿命は破砕機の性能・生産性を左右するものである。破砕ロールとテーブルライナは低衝撃の土砂摩耗(Severe Abrasion with Light Impact)を受けるが高炭素高クロム系の厚肉硬化肉盛溶接を適用することにより,従来のニハード鋳鉄や高クロム鋳鉄よりも2~4倍の耐久性が得られ,更に部品の摩耗部を肉盛溶接によって新品同様に再生し,経済性の向上に貢献している。

(1) 破砕機の構造

破砕機の構造の一例として石炭焚き火力発電ボイラ用堅型微粉炭機の縦断面構造を図1に示す。原料炭は給炭機より微粉炭機に供給され給炭管を通って回転テーブル上中央に落下する。石炭は,硬化肉盛されたテーブルライナとロールの間で適正な粒度(75m以下)の微粒子に圧壊・粉砕され,空気流によって発電機ボイラのバーナーへ搬送されて燃焼する。ロールおよびテーブルライナの摩耗面は,数十mm減耗するまで使用できるので,肉盛厚さは20mm以上数十mmを必要とする。

(2) ロールおよびテーブルライナ等の硬化肉盛溶接

高炭素高クロム系の表面硬化肉盛溶接法としては,①被覆アーク溶接法,②サブマージアーク溶接法,③セルフシールドアーク溶接法があり,何れの溶接棒,溶接ワイヤも開発実用されている。HRc=60もある高硬度材の厚肉硬化肉盛は,様々な形状のビードきれつが発生し剥離等の欠陥が発生しやすいので,2~3層盛が一般的でメーカーが層数を制限している場合もある。ロールおよびテーブルライナの溶接は,肉盛厚さの大きいことと溶接能率・生産性の点から被覆アーク溶接は適当でなく,セルフシールドアーク溶接またはサブマージアーク溶接が推奨される。

(3) セルフシールド硬化肉盛溶接

① セルフシールド用フラックス入りワイヤ(FCW-S)を使用して全自動溶接または半自動溶接を行う。

② 炭素鋼,低合金鋼,マンガン鋼,ステンレス鋼および鋳鉄に適用できる。

③ 直流定電圧型溶接機(電源)と定速型ワイヤフイダーを使用する。

④ 溶接施工条件の一例を表1に示す。溶接ビードきれつの数,深さ,幅等を制御し,溶接残留応力を軽減するために予熱温度,パス間温度,溶接入熱等を制御する。

⑤ 溶接施工上の注意

(ⅰ)予熱温度:150~260℃

(ⅱ)パス間温度:予熱温度以上

(ⅲ)パス間および溶接後のビード冷却は徐冷するよう制御

(ⅳ)母材の脆化および母材へのきれつ進行を防止するためステンレス系溶接棒による下盛溶接を推奨

(ⅴ)スパッターの減少,ビード形状の改善のためにサブアーク溶接用のフラックスの併用可能

(ⅵ)溶接後熱処理を推奨

⑥ 溶着金属の化学成分の一例を表2に示す。

⑦ 溶着金属の硬度の一例を表2に示す。猶後熱処理をした場合,例えば4層でHRc=63の溶着金属硬度は650℃2時間の後熱処理でHRc=56,760℃2時間の後熱処理でHRc=54,と低下するが耐摩耗性に変化は見られない。

(4) サブマージアーク硬化肉盛溶接

① サブマージ硬化肉盛溶接には,合金ワイヤまたはフラックス入りワイヤと一般フラックスの組合せと軟鋼ワイヤと合金入りフラックスの組合せによる方法があるが,品質の安定と経済性の点より,高炭素高クロム系の高硬度肉盛溶接には,最近は合金フラックス入りワイヤが主として使用されるようになっている。即ち,低炭素鋼のチューブに合金元素と脱酸材等を入れたワイヤ(FCW)と一般フラックスの組合せで,サブアーク溶接を行う。

② 炭素鋼,低合金鋼,マンガン鋼ステンレス鋼および鋳鉄に適用できる。

③ 溶接施工条件の一例を表3に示す。

④ 溶接金属の化学成分と硬度は母材材質と母材の希釈の影響を大きく受ける。母材が炭素鋼の場合の溶着金属の化学成分の一例を表4に示す。

⑤ 溶着金属の硬度,耐摩耗性,耐衝撃性

(ⅰ)硬度(2層以上)ロックウェルC硬度

HRc=55~60(HV=600~700)

(ⅱ)耐摩耗性能:0.30%炭素鋼を1とした場合40~60

(ⅲ)耐衝撃性能:0.30%炭素鋼を10とした場合5

(5) その他の破砕機の部品の例を図2に示す。

参考文献

1)(社)溶接学会編:溶接・接合便覧,丸善(株),p.710

2)リンカーン社:型録類,H200,H360等

〈谷垣  尚 / 2012年改訂[図字句修正]〉

このQ&Aの分類

肉盛溶接

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破砕機の表面硬化肉盛溶接製品名:破砕機のロール等施工法:サブアーク法,セルフシールド法

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