接合・溶接技術Q&A / Q02-04-13

Q焼き入れ,窒化,浸炭処理された母材への肉盛で注意すべき点は何ですか。

耐摩耗性を高めるため,焼き入れ,窒化,浸炭などの処理がされているものがある。これらはいずれも表層部(有効深さは熱処理条件によって異なる)の硬さを高めることによって耐摩耗性を確保している。焼き入れ,浸炭の場合,これらの部材に溶接を行うときは母材自身または母材表層部のC量が高く,割れを発生しやすくなることに注意すべきである。このため軟化焼純を行ってから溶接する場合もあるが,一般的には母材のC量があまりに高く,0.6%以上もある母材では溶接性は悪いといえる。焼き入れして使用される母材には,SK材,SUJ材,SKD材,S45C,S55S材,SCM材などいろいろな種類があり,鋼の焼き入れ状態は焼き入れ温度(オーステナイト組織)から急冷して炭素をむりやり結晶格子に閉じこめたもので,いわば不安定な状態といえる。浸炭においても同様で,表層部は図1,2に示すように1%以上のC量の領域まで侵入させ,これを焼き入れして硬さを確保することを特徴とするものであるから考え方は焼き入れ鋼と同様である。窒化された母材への肉盛では,微細割れの発生,ピンホールの発生が多く,表層の窒化層を除去しないと健全な肉盛部は得られない。窒化によるHV800~1000の硬さ上昇の原理は,Fe-N,Fe-Al-N,Fe-Cr-N系の窒化物を形成させ,結晶格子に大きなひずみを起こさせることによるもので,図3,4に示すように窒化条件によって窒化層の深さ,硬さは変化するが,肉盛溶接に際しては0.5mm前後はグラインダー等により除去すべきである。

参考文献

1)(社)日本鉄鋼協会編:鋼の熱処理,丸善(株),p.85,99,(昭和49年)

〈江本 幸生〉

このQ&Aの分類

肉盛溶接

このQ&Aのキーワード

焼き入れ,窒化,浸炭処理

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