接合・溶接技術Q&A / Q02-04-15

Q肉盛後の後熱処理の効果は何ですか。

硬化肉盛の場合,溶接完了後に徐冷などせずにそのまま放冷すると,翌日肉盛部が割れていたなどの事例がある。この割れは,おおむね肉盛溶接方向と直角に発生することが多く,遅れ割れと呼ばれる。後熱の効果は,溶接完了後ただちに溶接部を加熱することによって水素を放出させ,遅れ割れを防止することにある。予熱だけで遅れ割れを防止するためには高温の予熱が必要であり,品物の質量によっては高温予熱が困難であり,後熱との併用により予熱温度の低下ができる。

図1,2は,一例として2.25Cr-1No鋼の遅れ割れに及ぼす後熱の効果を示したものである。予熱だけで割れ防止をするには約330℃の予熱が必要であるが,後熱を併用すれば予熱150℃とし,後熱を300℃×30分間実施すればよい。硬化肉盛では肉盛材料の成分,硬さなどにより肉盛材料毎に適正な予熱温度が要求され,一般的には予熱温度±50℃の高めとし30~60分の後熱を行い徐冷することが多い。

参考文献

1)最新接合技術総覧編集委員会編:最新接合技術総覧,(株)産業技術サービスセンター,p.98,99,(昭和59年)

〈江本 幸生〉

このQ&Aの分類

肉盛溶接

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後熱処理

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