接合・溶接技術Q&A / Q04-01-04

Q単純化された溶接割れ試験と異なり,実際の溶接ではいろいろな因子があると思います。実際に適用している具体的な低温割れ防止方法を教えて下さい。

低温割れには多くの因子があるため,実際にはそれらを総合的に考慮する必要がある。

(1) 連続溶接と予熱パス間温度

拘束が厳しい継手において連続溶接を行うと,1パス溶接のルート割れ防止予熱温度より低い温度の予熱パス間温度でルート割れを防止できる。

(2) 軟質溶接棒

例えば,780N/mm2級高張力鋼突合せ溶接において,初層溶接への低強度溶接棒の適用は図1に示すように予熱温度を低減できる1)。本施工法は球形容器などで古くから採用され,高張力鋼の炭素当量(Ceq)が高い頃には施工上の安全性を高めていた。現在は鋼材の割れ感受性が改良されたが,水圧鉄管などの高温多湿環境下での施工において効果を発揮している。さらに,従来は軟質層を除去していたが,水圧鉄管では軟質層を含む継手の強度が検討され,十分な継手性能を有することが確認されている。

また,すみ肉継手は冷却速度が速く強度が上昇しがちである。そのため,780N/mm2級高張力鋼のすみ肉溶接に590N/mm2級高張力鋼の溶接材料を適用し,予熱温度を低減した例もある。なお,このケースでは事前に溶接金属の引張試験を行い,その強度が母材規格を満足することを確認した上で施工を行っている。

(3) 開先形状の影響

図2にルート割れの発生に及ぼす開先形状の影響を示す2)。開先形状によりルート部の応力集中が異なるため,継手の割れ発生傾向も変化する。したがって,予熱温度の精度を上げるためには,開先形状を考慮する必要がある。また,ルート部の応力集中係数とルートの偏心率をPC評価式に加えた,次に示す新しい予熱温度推定式も提案されている3)。各開先の応力集中係数は図2中に示した(式中の単位は参考文献どおりとした)。

 

TO=1600PH-408

ただし

PHPCM+0.075log HD

kRF

160000

 

TO

:ルート割れ防止予熱温度(℃)

PCM

:溶接割れ感受性組成(%)

HD

:JIS Z 3113による溶着金属の拡散性水素量

(ml/100g)

k

:ルート部の応力集中係数

RF

:拘束度(kgf/mm・mm)

(4) 後熱の効果と予熱管理

一般に,後熱(後熱,PWHT)は拡散性水素の放散を促進し,低温割れ防止に有効とされている。図3に,多層溶接の割れ試験結果を示す。割れ防止予熱パス間温度が150℃の鋼材に対し,100℃の予熱パス間温度で溶接を行った後に各種条件の後熱を併用して割れ発生の有無を調べたものである。その結果,後熱条件が350℃×24hでは脱水素効果が十分なため割れの発生はなかったが,225℃×30minの後熱では水素を十分に放散しきれず割れを防止できないことが判明した。すなわち,多層溶接では予熱パス間温度の管理が最も重要であり,例えば予熱装置の不調などにより溶接中に局部的に予熱パス間温度が低下した箇所があると,それを後熱では補うことができないことがあるといえる。

参考文献

1)奥村,佐藤,浮田ら:軟質溶接継手のHT80水圧鉄管現場円周継手への適用について,溶接学会全国大会講演概要第20集,(1977)

2)片山鉄工(現,片山ストラテック(株)):技術資料

3)鈴木:新しい割れ指数PHによるルート割れの解析,溶接学会誌,Vol.49,No.11,(1980)

〈中西 保正〉

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低温割れ

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低温割れ因子と防止法

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