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The Japan Welding Engineering Society

  

   

▼No.

Q05-02-12

 

▼小分類

低合金鋼

 

▼キーワード

低合金構造用炭素鋼

材質:低合金鋼

施工法:一般

 

 溶接技術教育シート
  (IIWシラバス)
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自動車プラスチック金型〔機械構造用炭素鋼(S55Cなど),低合金構造用炭素鋼(SCM445など)〕の補修溶接における溶接施工上の注意点を教えて下さい。

  

  

S55C,SCM445など中・高炭素鋼は,一般の低炭素構造用鋼の場合に比べて,熱影響部が溶接によって極めて硬化しやすい。溶接熱影響部が硬化すると,よく知られているように低温割れ感受性が高くなるとともに,継手部の延性が低下し溶接部の信頼性が低下することとなる。このため継手溶接,補修溶接ともにこれらの現象を軽減することが必要となる。

熱影響部の焼入れ硬化性を評価する方法として炭素当量(Ceq)がよく知られている。図1に炭素当量と熱影響部の硬さとの関係の例を示すが,炭素はもとよりCr,Moなどの成分を合金として多く含むほど硬度が上昇することが分かる。なお,熱影響部の硬さは冷却速度によっても影響されることから,溶接方法によってもその値が異なることとなる。

炭素当量の高い材料の場合には,溶接熱影響部に低温割れを生じやすいことが知られている。割れの代表的なものとしては,ビードの直下に生じるビード下割れがある。図2に炭素鋼の炭素当量とビード下割れの関係の例を参考に示すが,炭素当量が0.4%程度から急激に生じやすいことを示している。

このような材料の溶接を行う場合には(1)溶接材料の選択,(2)溶接施工条件について次のような注意が必要となる。

(1) 溶接材料の選択

溶接金属部においては,拡散性水素による遅れ割れが問題となりやすく,このため溶接材料は低水素タイプを選択する必要がある。

被覆アーク溶接棒の場合には,低水素系溶接棒を選択する。ティグ溶接の場合には,拡散性水素が低いことから低温割れ感受性が極めて低いが,一般に溶接入熱が低く,溶接部の硬度が高くなる恐れがある。

(2) 溶接施工条件

熱影響部の硬さは,溶接後の冷却速度が大きく影響する。すなわち,冷却速度が遅くなると硬度が低下するが,さらには拡散性水素の散逸が容易となることから,予熱・パス間温度を高めに設定する。例えば図3に0.5%炭素鋼について予熱温度と熱影響部の硬さとの関係の例を示すが,この場合には300℃程度の予熱が必要であることを示している。

溶接条件としては上記のように冷却速度をできる限り遅くすると効果があるが,一方,溶接入熱を高くすると母材成分によっては高温割れの危険が増すことから慎重な対応が必要となる。

なお,今回の質問にあるような補修溶接の場合には,さらに補修が必要となった原因を十分調査し,対象物の状況,使用環境などを考慮して補修の可否,要否についても十分に検討することが重要である。


〈夏目 松吾〉