接合・溶接技術Q&A / Q07-01-06

Q各種の溶接姿勢(下向,立向姿勢など)に対して,高能率に施工できるアーク溶接法は何でしょうか。また,水平に固定した管の周溶接に適するアーク溶接法にはどのようなものがありますか。

溶接姿勢によって溶融池に作用する重力の方向が異なるため,溶接電流や溶接速度などの溶接条件は溶接姿勢によって制約を受ける。表1は,各溶接姿勢における溶融池の挙動,ビード形状の特徴および溶接作業性などを比較したものである1)。下向以外の溶接姿勢では溶融金属の垂れ下がりが生じるため,溶接電流を増加させるなどして,むやみに大きい溶融池を形成することができない。

表2は,各種アーク溶接法の主な特徴を示す一例である2)。下向,横向姿勢についてはサブマージアーク溶接が最も高能率な方法であるが,溶接部にフラックスを散布することが必要であるため,上向・立向姿勢での使用は通常不可である。

その他,溶接姿勢は立向に限定されるが,立向溶接の高能率アーク溶接法としてはエレクトロガス溶接がある。溶接姿勢の他に継手形状などの制約も受けるが,近年鉄骨のダイヤフラムの溶接などへの適用が増加している。

水平固定管の周溶接では,溶接の進行に伴って,溶接姿勢が下向,立向(下進),上向,立向(上進)と時々刻々変化するため,その施工にはかなりの熟練を必要とする。特に裏波ビードを安定かつ均一に形成することが必要な場合には,より一層の熟練度が要求される。

このような水平固定管の全姿勢溶接に多用されている溶接法は,低周波パルスティグ溶接である。低周波パルスティグ溶接法は,図1に示すように,大電流のパルス電流期間で母材の溶融を行い,小電流のベース電流期間でその凝固を促進することにより,母材への入熱を制御する手法であり,そのビード外観はうろこ状となる3)。ただし,上述のように,溶接姿勢によって重力の作用方向が変化するため,一周を6~8等分してそれぞれの溶接姿勢に適した条件で溶接を行う姿勢制御溶接を採用することも多い4)

比較的大径の水平固定管では,マグ・ミグ溶接が採用されている。マグ・ミグ溶接では裏波の確保がティグ溶接より困難であるため,裏当て材を使用することが多く,裏当て材を取り付ける専用の治具なども開発されている5)。また溶接姿勢による重力の影響はティグ溶接の場合より著しいため,溶接条件の姿勢制御はより重要なものとなる。

パイプラインなど高能率が要求される水平固定管の場合には,最下端から最上端までの上進振り分け溶接,あるいは最上端から最下端までの下進振り分け溶接が用いられている5)

参考文献

1)横尾ほか:ティグ溶接入門,産報出版(株),p.85

2)日溶協・電溶機部会編:アーク溶接の世界 パートⅠ

3)三田:最近のアーク溶接機 第1回,溶接技術,1991年6月号,p.123

4)横尾ほか:ティグ溶接入門,産報出版(株),p.132

5)(社)溶接学会編:溶接の自動化における最新技術,H10秋季全国大会技術セッション資料

〈三田 常夫 / 2012年改訂[字句修正]〉

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溶接姿勢,アーク溶接法

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