接合・溶接技術Q&A / Q07-01-08

Q部材表面の耐食性や耐磨耗性あるいは装飾性の機能を向上させたいのですが,どのような表面処理法あるいは肉盛溶接法がありますか。

部材表面に新しい表面機能を付与したり,機能向上をはかる方法は,総称して表面改質法と呼ばれている。表1にその分類を示すが,大略,コーティング(被覆処理)法と元素浸透・相状態変化処理法に2分される。さらにそれぞれの処理原理に基づいていくつかのグループに分けられる。また,形成可能な表面改質層の厚さによりサブミクロンの極薄膜からmmオーダーの厚膜までに分類できる。

コーティング法は,優れた機能を有する材料を部材表面にコーティングもしくは溶着させることにより,新しい表面機能を部材に付与する方法である。コーティング材には,金属(合金),金属間化合物,セラミックス,プラスチックス,これらの複合材料がある。コーティング材と部材との組合せの自由度は大きく,処理方法を選べば金属部材の表面にセラミックスやプラスチックスをコーティングすることは困難ではない。コーティング材の機能としては,例えば半導体・光学部材に対しては電気・磁気機能や光学的機能があり,機械・構造体部材に対しては耐摩耗・しゅう動特性,耐食・耐エロージョン特性,耐熱・断熱特性,装飾性(表面色調)などがある。PVD,CVD,溶射では,コーティング材と部材は材料学的には一体化していないために密着性(接合強度)は必ずしも十分とは言えないが,肉盛や圧着クラッド法では,材料学的に一体化しており,概して密着性は良好である。

元素浸透・相状態変化処理は部材表面から内部に向って部材と一体的に表面改質層を形成する処理法であり,密着性はコーティング法に比して優れている。元素浸透法は,各種の元素を部材表面から非平衡的に(イオン注入法)もしくは熱平衡的に(拡散浸透法)浸透させ,浸透層に優れた機能を有する合金や化合物を形成する方法である。イオン注入法では部材材質によらず各種の元素を浸透させることができるが,拡散浸透法では部材により適用できる元素は限定される。表1に鉄鋼部材に対する代表的な浸透元素を示すが,その機能は耐摩耗・しゅう動特性,耐食・耐エロージョン性,耐熱性が主である。

相状態変化処理は,部材表面層を単に加熱冷却することによりその部分の組織構造を変化させて新しい機能を発現させる方法であり,溶融を伴わない加熱冷却法と溶融を伴う急冷凝固法がある。前者は鉄鋼のマルテンサイト変態を利用する表面硬化法(いわゆる焼入法)であり,後者は焼入れ以外にも溶体化や非晶質化処理などにより耐食性などの各種の機能を発現できる。

このように表面改質法とその表面機能の組合せは多岐にわたるために,その選定にあたっては,①機能,②改質層の厚さ,③密着性,④部材への適用性(部材の寸法,形状,処理温度など),⑤処理コストなどを総合的に判断する必要がある。

参考文献

1)溶接学会編:溶接・接合便覧,丸善(株),pp.693-770,(1990)

〈中田 一博〉

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