接合・溶接技術Q&A / Q07-02-20

Qマグ・ミグ溶接のアーク起動時にスパッタを発生させないようにする方法はないのでしょうか。

マグ・ミグ溶接のアーク起動は,一般に,図1.(a)のようにして行われます。トーチスイッチをONするとシールドガスが流れ始め,同時に溶接電源から無負荷電圧が出力され,通常値より遅いスローダウン速度でワイヤの送給を開始します。そして,ワイヤが母材に接触すると大電流(短絡電流)が通電され,ワイヤの先端部は抵抗発熱によって加熱・溶融され,ヒューズ作用による溶断が生じます。ワイヤ先端部の溶断によってワイヤ-母材間にギャップが生じると,そこにアークが発生します。

アーク起動時に発生するスパッタは,ヒューズ作用によるワイヤの溶断時にワイヤ先端部の溶融金属の一部が飛散したものであり,その発生を極力抑制するように,アーク起動時の出力電圧設定やワイヤスローダウン速度の設定などを工夫していますが,毎回満足できる結果を得るまでには到っていません。

しかし近年,ワイヤ送給モータに応答性の高いACサーボモータを搭載したプル式ワイヤ送給装置が開発され,ワイヤ送給の安定性改善のみならず,ワイヤ送給の精密制御も可能となっています。この高速・精密制御性を活用して,図1.(b)に示すような新しいアーク起動(ワイヤリトラクト・アーク起動)方法が開発され,アーク起動不良やそれに伴うスパッタの発生を飛躍的に低減できるようになっています。

ワイヤリトラクト・アーク起動方法では,起動信号が入力されると溶接電源から電圧を出力せずに,ワイヤを母材へ短絡するまで低速度で前進送給させます。ワイヤと母材の短絡を検出すると,ワイヤと母材が溶着しない程度の小電流を通電し,通電を維持したままでワイヤを後退送給させ,ワイヤ-母材間に生じた隙間に微小アーク放電を開始させます。アーク放電開始後もワイヤの後退送給を続け,アークが所定の長さまで成長するとワイヤの送給方向を再び反転させて,所定の送給速度で前進送給させるとともに,溶接電源から所定の電圧を出力して溶接を開始します。

このアーク起動方法ではアークの起動に大電流を必要としないため,図2.のように,アーク起動時のスパッタを大幅に低減させることが可能となります。また,瞬時に安定なアークが起動される比率(瞬時アーク起動率)も極めて良好です。

〈三田 常夫 / 2012年新規〉

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