接合・溶接技術Q&A / Q07-04-02

Qマグ溶接でのスパッタの発生要因と防止策について教えて下さい。

国内ではマグ溶接の大半を占めている炭酸ガスアーク溶接は,経済性の優れた施工法として多用されているが,比較的スパッタ発生量が多い溶接法でもある。スパッタは,ノズルに付着してシールドガスの流れを阻害したり,溶接構造物に付着して手直し工数を増やしたり,溶接欠陥の原因になったりする。スパッタの発生機構は図1に示すように,大きく4種類に分類される。低スパッタ化のためには溶滴の短絡現象やアークの力を制御することが大きなポイントであり,溶接ワイヤ・溶接電源の両面からスパッタ発生を抑えるアプローチが必要である。

図2に示すように,溶接ワイヤの化学組成はスパッタの発生量を大きく左右する。これは,溶接ワイヤの成分によって溶滴の形や物性が変わり,スパッタ発生量と密接な関係のある短絡回数が増減するためである。一方,溶接電源の波形制御の観点から見ると,スパッタの発生量は図3に示すように溶接の短絡移行時の電流レベルに依存する。溶滴の短絡移行後でアークが再発生する瞬間の電流レベルが大きい(つまり,アーク再発生のエネルギーが大きい)ほど周囲の溶滴や溶融池を吹き飛ばしてスパッタを発生させるからである。したがって,溶接ワイヤの面からは,Si,Mn等の脱酸元素を調整して溶滴の大きさや形を調整して短絡回数そのものを少なくするとともに瞬間短絡を防止し,溶接電源の制御面からは,溶滴移行後のアークが再発生する瞬間に電流を下げてアークの爆発力を弱める制御を行うことがスパッタ発生量の低減化に対して有効である。

また,自動車業界等で採用されているパルスマグ溶接は,ピーク電流とベース電流が交互に流れる電流波形を持ち,スパッタ発生量の少ない溶接法として知られている。この溶接法は安定した1パルス1溶滴移行(1回のピーク電流の後に1個の溶滴が離脱する)を,ワイヤの化学組成と溶接電源の特性とをリンクさせ,アーク電圧の低い条件においても,1パルス1溶滴移行が得られるようにしているところにスパッタ発生量低減のポイントがある。

図4に各種マグ溶接法のスパッタ発生量の比較をまとめて示すが,マグ溶接におけるスパッタ発生量は溶接条件,ワイヤ種類,シールドガス組成の適切な選定により低減が可能である。

なお,施工面でも,アーク電圧,トーチ角度・ワイヤ突出し長さ等の溶接条件を適切に調整・選択することにより,スパッタ発生量は低減できる。

参考文献

1)菅:スパッタはどこまで防止できるか?(2),溶接材料からのアプローチ,溶接学会誌,Vol.59,No.8,pp.17-21,(1990)

2)小笠原ら:短絡移行溶接における電流波形制御,神戸製鋼技報,(株)神戸製鋼所,Vol.35,No.3,pp.22-26,(1985)

〈細井 宏一〉

このQ&Aの分類

マグ溶接

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スパッタの発生と防止

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