- 接合・溶接技術Q&A / Q07-06-02
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Q構造用鋼,ステンレス鋼,アルミニウム合金の電子ビーム溶接,レーザ溶接における溶接欠陥について説明して下さい。また,それを防止する手段・方法についても教えて下さい。
レーザ溶接および電子ビーム溶接においても,他の溶接同様にさまざまな欠陥が発生する。ここでは,高エネルギビーム溶接に特徴的な溶接欠陥について概説する。高エネルギビーム溶接では,材料とビームが短時間に激しく相互作用を起こすこと,溶融池がキーホール型と呼ばれる特徴的な形状であることに起因して,特有のポロシティと割れが発生する。
(1) ポロシティ
高エネルギ密度のビーム溶接は一般に溶込み深さと幅のアスペクト比が大きいことから,溶融池が不安定になりやすく,雰囲気中あるいは溶融金属から発生するガスがトラップされて,比較的大型の不定形なポロシティが発生する。特にアルミニウム合金は溶融時の粘性が低いことから,溶融現象が不安定になりやすい。
ガストラップの形態としては,アシストガスなど雰囲気中からガスを巻き込む場合と,アルミニウム合金中に含まれるマグネシウムや亜鉛,鋼板表面の亜鉛メッキなどの低沸点元素がガス化してトラップされる場合がある。
溶融池を安定化させ,ガスのトラップを防ぐために,オシレーション,複数ビーム化,パルス照射等,ビーム照射方法の工夫がなされる。
(2) 割れ
キーホール型の溶込み形状であるという形状的な因子と,凝固速度が速いという冶金的な因子から,凝固粒界や柱状晶の会合部で高温割れが発生しやすい。アルミニウム合金やNi基合金の溶接においては,HAZ部での液化割れが発生することがある。
パルス照射などの方法で溶融部の熱履歴を制御することによって高温割れを防ぐことができる。また,割れ感受性の低い材料を選択することに加えて,溶加材を用いて適当な元素を添加することによって結晶を微細化し,溶融部の割れ感受性を抑えるなどの対策がとられる。
参考文献
1)Rappら:Proceedings of the 6th conference on Laser Treatment of Materials ECLAT96,p.100,(1996)2)西本:溶接学会 全国大会講演概要 第62集,F-3頁,(1998)
3)中島ら:溶接学会 全国大会講演概要 第60集,94頁,(1997)
〈坂元 宏規〉