接合・溶接技術Q&A / Q07-06-04

Qアーク溶接など他の溶接法に比べて,電子ビーム溶接の利点は何ですか。実用例とともに教えて下さい。

電子ビーム溶接は,パワー密度が通常のアーク溶接と比べて桁違いに高い。このため,溶融幅が狭く深い溶込みが得られる。鉄鋼を例にとると,100mm以上の厚板を1パスで溶接することが可能である。

図1には,窒素貯蔵用球形タンクの製作に電子ビーム溶接法を適用した例を示すが1),板厚96mmの赤道部分が1パスで溶接されている。

また,単位溶込み深さ当たりの入熱量が小さいため,熱影響部が狭く,溶接変形の少ない高精度な溶接が可能となる。これを生かして,ミッションギアをはじめとした自動車部品から,直径4m以上の核融合装置2)に至るまで幅広く適用されている。

さらに高パワー密度熱源であるため,高融点のモリブデン,ジルコニウム,タンタル合金等の溶接や,熱伝導の高い銅合金の溶接が可能である。

溶接は真空中で行われるため,大気からの汚染が無く清浄な溶接が可能となる。活性金属の溶接や高付加価値の航空機,ジェットエンジン,ロケット部品の溶接等に用いられる。

逆に,真空中で溶接を行うことは,作業性の点で他の溶接法に劣る。

制御性が良いのも,電子ビーム溶接法の特徴の一つである。

電子ビームは磁場により容易に進路を変えることができるため,高速偏向技術を用いて高精度な表面焼き入れ3)や超小型部品の精密溶接4),さらにはビームオシレーションによる溶接欠陥の防止等5,6)に用いられる。

参考文献

1)H.Irie:IIW Doc.Ⅳ-585-92,(1992)

2)喜多ほか:溶接学会誌,50,pp.3-8,(1981)

3)宮永:熱処理,23-2,pp.86-91,(1983)

4)中村ほか:溶接学会高エネルギービーム加工研究委員会資料,HEB-193-95,(1995)

5)志田ほか:溶接学会誌,46,pp.12-17,(1977)

6)入江ほか:溶接学会誌,51,pp.11-16,(1982)

〈塚本  進〉

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電子ビーム溶接

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電子ビーム溶接の利点

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