接合・溶接技術Q&A / Q07-06-06

Q産業用レーザとして広く用いられているYAGレーザとCO2レーザは,その特徴や応用分野にどのような違いがあるのでしょうか。両者の使い分けについて教えて下さい。

CO2レーザとYAGレーザ(Nd:YAG)のそれぞれの加工特性に違いを生じさせる要因として,①発振波長,②パルス発振特性と③集光特性が挙げられる。また,加工機(溶接)システムの構成に影響するビームの伝送方法は,YAGレーザがミラー伝送とファイバー伝送とが可能であるのに対し,CO2レーザはミラー伝送のみである。ビームの伝送方法の選択は加工機の使用される環境によって決定されるが,伝送系が複雑になる場合はファイバー伝送とする例が多い。

以下には,各レーザの加工特性からみた使い分けについて示す。図1はレーザ光の波長と各種金属の吸収特性及び諸特性を示す。近赤外域にあるYAGレーザ光の発振波長1.06μmに対する金属反射率は,遠赤外域にあるCO2レーザ光の発振波長10.6μmの金属反射率よりも小さい。すなわちYAGレーザ光はCO2レーザ光よりも金属に吸収されやすい。また,YAGレーザ光はCO2レーザ光よりもレーザ誘起プラズマによる吸収の影響を受け難い特性もある。金属材料へレーザ光を照射すると,その表面でレーザ光の吸収が起こり局部的に温度を上昇させ,照射時間とエネルギ密度によって切断,溶接,焼き入れなどの加工形態に応じた金属材料の相変化を起こす。

図2は,レーザ光を金属材料に照射した場合の温度上昇を示す概念図である。図中のAはYAGレーザ,BはCO2レーザによる金属材料の温度上昇と相変化の状態を示す。溶接加工における金属材料の溶融が開始されるまでに投入するレーザエネルギの大小は,加工品質や加工性能に大きく影響する。特に溶融池が小さいほど加工品質が良好になる微小スポット溶接及び,箔のような薄板の重ね溶接や突き合わせ溶接ではできるだけ小さなエネルギでの加工が好ましい。ビーム吸収率のより大きなYAGレーザによる加工は,金属材料の溶融が開始されるまでに照射するエネルギが少なくてすむ。一方,厚板の深溶込み溶接や,高速溶接を目的とする加工対象には大出力発振を得意とするCO2レーザの適用が多い。CO2レーザによる溶接の形態は典型的なキーホール溶接となり,ステンレス(SUS304)を対象とした場合,出力1kWでは溶込み2mm,6kWでは約8mmの溶込みが得られる。図3にはYAGレーザによる微細溶接部の断面,図4にはCO2レーザによる深溶込み溶接部の断面を示す。

現状の各レーザによる溶接の応用分野は,電子機器部品や自動車電装部品など小物部品の溶接にはYAGレーザが,自動車のボディーや機構部品,鉄鋼での板継ぎにはCO2レーザが用いられている。

参考文献

1)最近の吸収率データ,中野ALEC,JWES,LMP委員会,2000LMP-本-09

〈金岡  優 / 2012年改訂[加筆・一部削除・字句修正]〉

このQ&Aの分類

レーザ溶接

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YAGレーザとCO2レーザ

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