- 接合・溶接技術Q&A / Q07-06-07
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Q他の溶接法に比べて,レーザ溶接はどの点が有利ですか。その特徴とともに教えて下さい。
レーザ溶接の特徴および利点は次のような点である。
(1) 高出力密度ビームによる深溶込み溶接である。
図1はいろいろな溶接法の出力密度分布と典型的な溶接ビード形状を模式的に示す。レーザ溶接は電子ビーム溶接同様に著しく高い出力密度を示す。集光レンズを用いることにより,ビーム径を約0.1から数mmに変動できる。このため,高出力密度の熱源となり,金属のみならず,セラミックスや金属酸化物も溶融・蒸発させることが可能である。よって,キーホール状の溶融池を形成し,深溶込み溶接ができる。45kWCO2レーザで約40mmの鋼板を700mm/minの速さで高速溶接が可能である。図2は各種溶接法の接合速度(=溶接速度×溶込み深さ)を比較した例であり,45kWCO2レーザ装置は35,000mm2/minの接合速度にもなる。
(2) 瞬時に伝送・透過が可能な熱源である。
ファイバーやミラー等により遠距離にビームを伝送したり,YAG(ヤグ)レーザのように石英ガラスを透過させることもでき,自動化,FA化,システム化が容易な溶接法と言える。また,光分岐により多数箇所の同時溶接も可能である。
(3) 非接触の溶接法である。
遠隔の被溶接物を非接触で溶接できる。狭あいな部分でもレーザビームを送って溶接が可能である。真空室内の被溶接物をチャンバーの外より非接触で溶接できる。高速で動いている加工物も溶接可能であり,国内では動いている鋼板スラブ(板厚約30mm)をレーザで溶接している例もある。
(4) 低歪みで精密な溶接に適した溶接法である。
数10~100μmのビームスポットにもなり,溶接入熱量がきわめて少なく,溶接変形や歪みが従来のアーク溶接に比べて数分の1と少ない。この特徴は溶接が各種機器の組立に利用されるとき,大きな利点となる。よって,電子機器のマイクロ接合などに広く適用される。30~50μmの板厚の薄板が低歪みで突合せ溶接できる。ただし,開先精度や取付け精度はきびしくなる。
(5) 材質により吸収率が異なりビード形状が変わる。
金,銀,銅,アルミニウムなど電気伝導度の高い金属はビーム吸収率が低く,溶接し難い材料である。表面粗さや表面の酸化皮膜によっても吸収率が変化するので,考慮する必要がある。
(6) 電子ビーム溶接に比べて,つぎの長所を有する。
●加工時にX線の発生がない。
●磁場によりビームが偏向しない。
●大気中で溶接できる。(ワークの寸法が制限されない。)
(7) クリーンでFA化,LA化に適した溶接法である。
参考文献
1)新井武二,沓名宗春,宮本勇:レーザー溶接加工,マシニスト出版(株),p.26,(平成8年7月)〈沓名 宗春〉