接合・溶接技術Q&A / Q07-06-08

Q現在,どのような種類のレーザが溶接や切断に利用できますか。また,そのレーザ装置の特性(出力レベル,ビームモード,ビーム伝送特性,装置のイニシャルコストとランニングコスト,メンテナンスなど)を教えて下さい。

市販されているレーザ発振器の中で,溶接や切断にもっとも一般的に使用されているのはCO2(炭酸ガス)レーザとYAG(ヤグ)レーザである。どちらのレーザも大きな出力が比較的高い効率で発振することができるからである。

CO2レーザはCO2ガス,N2(窒素)ガスとHe(ヘリウム)ガスの混合ガスに電気放電を発生させレーザ光を励起するガスレーザである。混合ガスを封じ込める容器や混合ガスの対流のさせ方,電気放電(グロー放電)の電極の配置など発振器を構成する要素が多く,各種のCO2レーザ発振器が開発され改良を加えられている。発振するCO2レーザ光の波長は10.6μmの遠赤外線光である。現在市販されている最大のCO2レーザ発振器の出力は45kWクラスであるが,溶接,切断に使用されているのは5kWクラス以下のものが多い。

YAGレーザはNd(ネオジウム)イオンを微量に含んだイットリウム・アルミニウム・ガーネットという固体結晶に強力なランプで光をあて,レーザ発振を起こさせる固体レーザ発振器である。発振するレーザ光は赤外光の1.06μmでCO2レーザの波長の1/10である。YAGレーザでは波長が短いため,光ファイバを使ってレーザ光を伝送することができるが,CO2レーザでは光ファイバは使用できない。使用されているYAGレーザは1kW以下のものが多いが,現在4kWクラスの発振器も発表され,実用化されている。図1と図2にCO2レーザ発振器とYAGレーザ発振器の簡単な構成を示す。

レーザ光の集光性を決める要素に,波長とビームモードがある。波長が短いものほど集光性はよく,小さなスポットに絞り込める。この点からYAGレーザはCO2レーザの10倍小さなスポットへ絞り込めることになる。しかし,溶接や切断に使用される数百ワットレベルの出力を出すレーザ発振器では,横ビームモードと呼ばれるレーザ光の強度分布の影響が大きい。図3にレーザ光の基本的なビームモードの例を示す。ビームモードは英文名Transverse Electrical Magnetic modeの頭文字を取ってTEM何々で表される。TEM00が基本モードであり,ガウスモードとも呼ばれている。添字の次数が大きいほどマルチモードあるいは多重モードと呼ばれ集光性は悪くなっていく。

CO2レーザは気体レーザであるため,レーザ媒体が均一であり基本モードや低次モードが得やすく大出力でも集光性がよい。一方YAGレーザは固体のレーザ媒質のため,固体内の熱歪みが発生し,特に大出力レーザでは集光性のよい低次モードを得ることは困難である。このため,大出力レーザでは一般的にYAGレーザよりCO2レーザの方が集光性はよい。レーザ光を伝送すると,これはさらに顕著になる。CO2レーザの場合には,ビーム伝送は反射ミラーを使わなくてはならない。YAGレーザでは光ファイバを使用できる。しかしながら,光ファイバ内でYAGレーザビームは多重の反射を繰り返して伝送されるため,光ファイバから出射されたYAGレーザの集光性はさらに悪くなることを考慮しなければならない。

図4にCO2レーザ加工機の構成を示す。CO2レーザの発振効率は総合で10%程度といえる(発振部で20%レベル)。一方,YAGレーザでは総合で1%程度である。このため,YAGレーザではCO2レーザに比べて大きな発振電源や冷却装置が必要となる。一般的には同じ出力のクラスであればCO2レーザの方がYAGレーザより装置のイニシャルコストは安い。しかし,CO2レーザでは溶接,切断に加工機としての特別なレーザシステムが必要なのに対して,YAGレーザでは安価な産業用ロボットと光ファイバを組み合わせることができるので,より簡便で安価になる場合がある。装置全体のコストは対象とする溶接,切断の内容によって見積もる必要があるといえる。

最後にランニングコストとメンテナンスについて述べる。CO2レーザではレーザ発振器を構成しているミラーやレンズ,ガスの循環器などのメンテナンスが必要である。YAGレーザではレーザ励起用フラッシュランプに寿命があり,定期的に交換しなければならない。実際のメンテナンスコストは使用している構成部品の種類や数,ランプの数で異なってくる。

ランニングコストとしては,電気および加工用に使用するガス(溶接用シールドガス)や切断アシストガスなど)のほか,CO2レーザではレーザ発振用の混合ガス(CO2+N2+He)が消費される。ガスの消費量はCO2レーザの出力や機種によって異なっているが,近年格段に消費量は少なくなってきた。むしろ,ランニングコストとしては加工ガスの方が大きなウエイトを占めるといってよい。

〈浦井 直樹〉

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