接合・溶接技術Q&A / Q07-08-02

Qワイヤタッチセンサ以外の部材端検出法にはどのようなものがありますか。

溶接ロボットで部材端を検出するためのセンサとして通常よく用いられるのはワイヤタッチセンサであるが,検出精度やサイクルタイムが問題となる,あるいはワークの形状の関係でタッチセンサでは位置が正確に求められないなど,ワイヤタッチセンサの適用が難しい場合がある。このような場合に利用できるセンサとして,①光学式センサ,②アーク電圧変化を利用したセンサ(アークセンサ)などがある。

最初に,光学式センサによる部材端検出について説明する。光学式センサとしては種々の方式が開発されているが,ここでは代表的な方法として,次の2つの例を紹介する。

(1) トラッキング用の視覚センサによる方法

一般に用いられているトラッキングセンサでは,図1のように,溶接トーチの近傍に取り付けられたレーザ光源からスリット光あるいはスキャニングされたスポット光を溶接点前方の溶接継手に照射して反射光をCCDカメラに取り込み,その画像情報から溶接継手部の断面形状を抽出する。このようにして得られた継手の断面形状を,予めセンサに与えられた継手形状データと照合(パターンマッチング)して継手の特徴点を求め,エンドエフェクタ(溶接トーチ)が常に溶接に最適な位置に来るようマニピュレータ(ロボット)の軌跡を制御する。

このセンサを利用して溶接開始点側の部材端を検出するためには,図2のように,溶接開始前に溶接するのと逆方向にセンサを走査する。センサの視野に溶接線が存在している間は上述の方法によって継手の位置を求められるが,センサが部材端まで達すると,定義された断面パターンが検出されなくなるので,パターンマッチングが行えない。したがって,画像情報から継手の特徴点が検出されなくなった瞬間の位置情報を取り込むことで部材端が求められる。一方,溶接終了点側については,センサが溶接点より先行していることを利用し,溶接実行中に断面パターンがカメラの視野から消え,継手の特徴点検出が不能となる位置をもって部位端の測定が行える。なお,乱反射などの影響によって瞬間的に断面パターンを見失った場合に部材端と誤検出する不具合を防ぐため,教示された溶接終了点付近にロボットが到達するまで終了点検出を行わないのが普通である。

(2) 光(レーザ変位)センサによる方法

レーザ変位センサは,図3のようにレーザのスポット光を利用してセンサと被測定材との間の距離を計測するもので,これを溶接ロボットに装着し,部材の位置や継手の形状を計測する手法が実用化されている。ワイヤタッチセンシングよりも高速のセンシングが可能で,サイクルタイムの短縮には有効な手段である。

このセンサで部材端を検出するには,距離を計測しながらセンサを部材とほぼ平行に走査することが必要である。図4にその一例を示す。図4のようにレーザビームが部材の端部に達した時点で測定値が不連続に変化するので,不連続点(または,部材の形状によっては屈曲点)を検出することによって端部の位置が求められる。不連続または屈曲点を検出する方法として,センサの出力を微分回路で受け,微分値があるスレッシュホールドレベルを超えた瞬間のロボット座標を読み取る方法,センシング結果(距離)をロボットの移動距離の関数で近似し,不連続または屈曲点に達した時点のロボットの座標位置をセンシング終了後に推定する方法などがある。後者は前者に比べ,ソフトウェアの処理が複雑になるものの,ノイズの影響を受けにくく,安定した結果が期待できる。

(3) アーク現象センサの利用

次に,アークセンサを利用した部材端検出法を紹介する。アークセンサは通常倣い溶接のために利用されるが,「高速回転アークセンサ」と呼ばれる方式のセンサを用いれば,倣いだけでなく部材端の検出まで行えることが報告されている。

図5はワイヤをすみ肉部の溶接線上でワイヤを高速(数10Hz~100Hz)で回転させたときのアーク電圧変化を模式的に示したものであり,アーク電圧は図のようにワイヤの回転に伴って周期的に変化する。この電圧変化の様子は,回転中心と溶接線の相対位置関係により,例えば図中の実線と破線のように変化する。ここで溶接線上の溶接前方を回転の位相0°とすると,位相90°と270°の位置におけるアーク電圧を比較することにより,溶接線と回転中心のずれ量が求められる。倣い溶接は,こうして求められたずれ量をある理想値に保つことで実現される。一方,位相0°と180°のアーク電圧は,溶接線上ではある一定の差が持続する(溶融プールの存在による)。ところが部材端に達すると,前方にもはや部材(すなわちアークの陰極)が存在しなくなるため,位相0°の位置ではアーク長がそれまでに比べて長くなり,アーク電圧が上昇するのに対して,位相180°の位置でのアーク長は変わらない。すなわち0°と180°の位置での電圧差が瞬間的に大きくなるため,これを検出することにより部材端に到達したと判定できる。

溶接開始点側では,本電流に比べて低めの電流で本来の溶接線とは逆方向に溶接しながら部材端を見つけ,そこから本溶接が開始される。また,終了点側では,部材端まで溶接した時点でロボットの動作を止め,クレータ処理が実行される。さらに,部材端が溶接中に検出できるという特徴を利用して,角巻き溶接を実施している事例もある。なお,余談となるが,同様の手法を用いて,高速回転アークセンサによりビード継ぎの位置をかなり正確に求めることができる。

以上,ワイヤタッチセンサ以外の部材端検出方として,3種類のセンサを紹介した。その選定にあたっては,部材端検出以外に求められる機能,対象溶接部位およびその周辺のワークの形状,許容されるコストなどがポイントとなる。例えば部材端から一定距離内側を開始・終了点とする場合,アーク電圧で部材端を検出する高速回転アークセンサは利用できない。あるいは,狭隘部の溶接では,カメラや変位センサがワークと干渉するので,光学式センサを採用できない場合がある。

〈岩城 俊二〉

このQ&Aの分類

センサ

このQ&Aのキーワード

溶接端部センシング

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