接合・溶接技術Q&A / Q07-08-03

Qアーク溶接の溶接線倣いにレーザセンサ適用する場合の制約には,どのようなものがありますか。

レーザセンサで溶接線倣いする方式としては,主に2種類考えられる。1つは,レーザスリット光センサを利用する方式,もう1つは,レーザスポットセンサを利用する方式である1)

また,溶接線倣いの方式として,溶接前に溶接線の形状を認識して,その形状を基にプレイバック運転する方式と溶接中にリアルタイムで溶接線倣いする方式がある。

これらは,それぞれで制約が異なってくる。

まず,共通の制約事項について以下述べる。

(1) センサの大きさの制約

レーザセンサは,アークセンサと異なり,溶接トーチ以外にセンサが取り付くことになり,ワークとの干渉を考慮する必要がある。通常は,溶接線前方をレーザセンサで確認するため,溶接線前方にリブなどの干渉物があると衝突してしまう。そのため,その前方で溶接を終了する必要がある2)

特にレーザスリット光センサを利用する場合は,スリット光センサとCCDカメラの組合せとなるため,レーザスポットセンサを利用する場合に比べセンサが大きくなり,溶接できる範囲が狭められる。

(2) 材質の影響

レーザセンサは,光学的なセンサであり,反射光を捕らえて処理する特性を持っている。そこで避けられないのが光学的なノイズである。

その1つに材質の影響がある。一般鋼でガスカット面であれば,比較的精度はよい。しかしながらグラインダ面であるとレーザ光が正反射してセンシングできにくくなる。鏡面に近いほどレーザの反射光が得られなくなるのは当然である。また,材料の色の影響も無視できず,黒皮面などの反射率の悪いものは,センシング誤差を生じやすい。

(3) 開先形状の影響

狭開先になると壁が立ってくるので反射光が得られにくくなる。そのため,超狭開先の場合などは,開先斜面のデータは無視して処理するなどの方式が取られる。

また,開先の斜面に照射されたレーザスリット光は,虚像が開先底面付近に写り込むため,これを除外するためのソフト処理を必要とする。レーザスポットで狭開先をセンシングする場合は,開先内で多重反射してレーザ光が返ってくることになり,光学的なセンサの配置やソフト処理が必要となる3)

開先の深さの影響もある。焦点距離の関係から開先深さに制約が生じてくる。

レーザは,直線の平行光であるといえども焦点はあり,これを離れるとレーザ光がぼけて太くなってる。スリット光センサでは,CCDカメラ側の焦点深度との関係も考慮する必要のある場合がある。

したがって,一般には,開先が深い溶接の場合は,開先底面の情報だけで制御するか(開先表面は写さず,底面に常に焦点を合わすようにする),倣い精度を粗くして(深さに応じて視野範囲を広く取る必要が生じ,1画素あたりの見える範囲を大きくとることになり,その比率に従って精度が落ちることとなる)深い開先に対応することになる。レーザスリット光では,線が太くぼけることからより厳しいセンシングとなってくる。開先形状全部をとらえる場合,倣い精度±0.5mmを狙うとすると,一般に,開先深さは50mm程度が限度であろう。

また,ワークが任意の形状をしている場合は,溶接線に対し,直交するようにセンサを配置するような制御が必要となる。

(4) 取扱い性の問題

カメラなどの精密機器を現場で使用するため取扱いを慎重にする必要がある。ぶつけたりした場合には,較正が必要となってくる。

次に溶接中の制約としては,下記が考えられる。

(5) アーク熱の影響

溶接対象により使用する電流が異なってくるため,一般的な対処法の答えは出ないが,このアーク熱による影響は避けられず,センサは最高40℃程度が限度であり,溶接中は,常に空冷や水冷でセンサを冷やしておく必要がある。

(6) スパッタ,ヒュームの影響

溶接中のスパッタやヒュームの影響も避けられない。センシングの窓にこれらが付着した場合には,センシングできなくなることは言うまでもない。そのため,ピンホール化して,先端にエアーカーテンを設けるとか,スパッタやヒュームが付着しにくい保護面を設ける必要がある。また,定期的にこれを交換する必要がある。連続溶接で長い時間溶接する場合は,時間管理で溶接を止めて掃除するなどの措置を必要とする。

開先内にスパッタが付着した場合は,これを無視するセンシングソフトが必要となってくる(図1)。

(7) アーク光の影響

現状のセンサでは,溶接位置から約1インチ離れた所をセンシングすることは可能である。

実機では,レーザスポット光センサで30mm以上,レーザスリット光センサで50mm以上離してセンシングしている。アーク直下ではセンシングできないため,このセンシングした位置と溶接位置のずれ量を補正制御して溶接する。また,センサが離れているため溶接線が急激に変化する場合などは,センシング方向が変わるため,教示レスでは対応がつかない。

アーク光の減光やスパッタ対策として,遮蔽板をセンサと溶接位置との間に置いたりする。

(8) 溶接条件との兼ね合い

ウィービングする溶接では,一般的には,センサも動くことになり,撮像のタイミングを制御する必要がある。カメラもランダムシャッタカメラを使わねばならないという制約が出てくる。

また,溶接姿勢が変化する場合,センサの姿勢も変化することになり,この姿勢に応じたセンシング形状の補正が必要となる。

参考文献

1)藤田ほか:視覚センシング技術,溶接学会誌,第63巻,第7号,pp.33-37,(平成6年10月)

2)久貝:特集「ロボット溶接をより効果的に」,溶接技術,平成6年12月号,pp.66-72

3)石井ほか:アーク溶接ロボット用視覚センサ,日本ロボット学会誌,Vol.16,No.1,pp.96-101,(平成9年)

〈藤田  憲〉

このQ&Aの分類

センサ

このQ&Aのキーワード

レーザセンサの溶接線倣い

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