接合・溶接技術Q&A / Q07-08-05

Q視覚センサを用いて,アーク溶接条件をリアルタイムに適応制御するにはどのような方法があるのでしょうか。

適応制御とは,種々の外乱および制御対象のパラメタに対応して,これが溶接中に変動するので,適切な操作量を制御対象に与えて,望ましい制御量(出力)を得ることである。たとえば,制御対象として,薄板突合わせ溶接の場合であれば,裏ビード,表ビードの幅・高さが制御量であり,すみ肉溶接(重ねすみ肉溶接)であれば,ビードの脚長および溶込み形状,厚板の完全溶込み溶接では初層の裏ビード,多層の各層のビード高さなどが制御量となる。外乱などとして,たとえばギャップが大きくなれば,それに適応して溶接電流,溶接速度を小さくするなどの溶接条件すなわち操作量を適切に与えて,裏ビード,表ビードの幅・高さを制御する。種々のギャップ,溶接姿勢について基礎実験を行って溶接条件を予め設定することができる。この場合,ギャップ変動に適応して溶接条件(操作量)を制御対象に与えるので,フィードフォワード制御という。

一方,アーク長やワイヤ突出し長,トーチ位置などは最適の状態になるように溶接条件が定められる。外乱はギャップ変動や溶接姿勢のみでなく,ワイヤ送給速度の変化によるアーク長の変化,ワイヤ突出し長の変化などの外乱もあり,溶融池形状そのものおよびビード形状(ビード高さ)など制御量をセンシングして,これをフィードバックして,設定値と比較し,①できるだけ早く設定値に収束し,②定常状態では誤差がないよう操作量(電流,速度など)を制御する。

図1にフィードバック制御系について示した。図において制御量として,溶融池形状(ビード高さ・裏ビード,池幅など)の他に,アーク長,ワイヤ突出し長さ,トーチ位置なども考えた。ギャップ変動に関してはフィードフォワード制御を行っており,制御量およびギャップ変動のセンシングにはアークセンサ,CCDカメラなどが用いられる。

CCDカメラを用いた薄板の溶込み深さ制御システムを図2に示す。アーク光は強いので,溶融池を観察するとき,溶融池と母材との境界のコントラストが弱くなる。これを防ぐために,CCDカメラのシャッタに同期して,溶接電流を低電流(30A)に下げ,アーク光を減光することにより,溶融池およびギャップが明瞭に観察できる。典型的な画像を図3に示す。溶融池については前方形状を求めるために,トーチ直下の池幅W0および最大幅W1を計測する。

薄板の突合せ溶接において,スリットレーザ光を母材表面に当てると,ギャップにおいてレーザ光が途切れる。これを画像処理により検出し(光切断法),コンピュータのメモリに記憶する。これにより,電極直下におけるギャップ変動が求められる。

厚板の多層盛り溶接においては,開先内にスリットレーザ光を当て,溶接進行方向前方から観察したとき,図4(a)に示すように開先面に沿って,モニタ上にレーザ光が写り,ルートギャップ内で途切れる。これらを画像処理により検出し,ルートギャップおよび開先形状が求められる。

また,トーチ後方にスリットレーザ光を配置し,開先面を撮影したとき,図4(b)に示すようにモニタ上に開先の残り形状およびビード形状が写る。ビード表面にレーザ光が当たるので,これは凸形状にモニタ上に写る。この形状の最も高いところと母材表面との間の距離Dを測定し,これと母材厚さから,ビード高さが求められる。

〈大嶋 健司〉

このQ&Aの分類

センサ

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視覚センサで適応制御

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