接合・溶接技術Q&A / Q07-08-10

Qパイプの自動溶接装置を導入する上で留意すべき点は何でしょうか。具体的に教えて下さい。

パイプの溶接は,最も技量が要求される溶接である。これは,全姿勢の溶接となるため,溶融池の湯流れが重力の影響をうけビードの形成が変化することや初層の裏波が不安定に形成されることが理由である。このため,手溶接において熟練溶接士が行う作業を自動溶接におきかえるには,配管溶接の特徴を十分理解しておくことと,導入する自動溶接装置の装備する機能について考慮しておく必要がある。

図1は,固定管を下向き0度の位置から360度一方向に溶接を行う場合の溶融池の状況を示したものである。図に示すように各姿勢において溶融池の形状が変化し,融合不良や溶融池垂れ落ち,裏波の凹みや突き抜けなどが生ずる可能性があることがわかる。このため,自動溶接では,手溶接の技量に対応しうる機能を有している必要があり,とくに中小径配管に使用されるティグ自動配管溶接装置では,パルス溶接の適用による溶融池の垂れ落ち等の抑制や姿勢ごとに条件変更が可能なプログラム制御方式が装備されていることが望ましい1,2)。この場合,パルス条件を含めた溶接条件の適正化が必要なことは言うまでもなく,配管の径や肉厚に応じた条件データベースを作成する必要がある。一方,大径管などに適用されるマグ溶接やミグ溶接では,一方向の溶接ではなく,下進や上進による振り分け溶接にてビード形成の安定化がはかられており,使用する溶接条件域や溶滴移行形態など溶接条件の適正化が重要である3,4)

また,自動溶接において裏波溶接の安定化には,開先形状の選定が重要で一般に図2に示す開先形状が適用されており,ティグ溶接では,U開先でフィラー添加の場合とインサートリングを用いてノンフィラーで溶接する場合とがあるのに対し,マグ溶接やミグ溶接では裏当て材を取り付ける場合が一般的である。開先形状に合わせ,初層の溶接条件を精密に制御,設定することが必要となる。

脱技能化を目的として配管自動溶接装置を導入する場合,開先のギャップの変動をセンサにて検出し溶接条件を適応制御することで,安定して裏波を形成するシステムや多層溶接中のオペレータの監視を不要とするために,CCDカメラなどのセンサを用いてトーチのねらい位置制御や,溶接条件の制御を行う機能を有することが必要となる5)

また,高能率化を目的とする場合,多トーチ化や,多ヘッド化が有効な手段となる。さらに,溶着能率でマグ溶接やミグ溶接に劣るティグ溶接では,狭開先化による溶着量の低減やホットワイヤ化による溶着速度の向上をはかることで高能率化を実現することが可能である6,7)

参考文献

1)浅井ほか:TACSシステムの実用化,溶接法ガイドブック3「アーク溶接の自動化技術」,(社)溶接学会,PⅡ-72-76,(1995)

2)竹中ほか:中小配管自動溶接システムについて,溶接技術,pp.70-74,(1993.9)

3)金山ほか:パイプライン高能率・知能化溶接システムの開発,(社)溶接学会平成10年度秋季全国大会技術セッション「溶接の自動化における最新技術」,(社)溶接学会,pp.70-79,(平成10年10月8日)

4)大槻ほか:厚肉管高品質全姿勢自動MAG溶接システムの開発,溶接学会全国大会講演概要,第62集,pp.50―51,(1998)

5)小林ほか:全自動溶接システム,(社)溶接学会平成10年度秋季全国大会技術セッション「溶接の自動化における最新技術」,(社)溶接学会,pp.1-38,(平成10年10月8日)

6)Narrowing the gap with hot wire orbital TIG, Welding&Metal Fabrication, June.pp.12-14,(1998)

7)多紀ほか:ITER実規模真空容器現地溶接への高能率狭開先TIG溶接法の適用,第164回溶接法研究委員会資料,No.SW-2595-98,(1998)

〈浅井  知 / 2012年改[字句修正]〉

このQ&Aの分類

自動化溶接システム

このQ&Aのキーワード

パイプの自動溶接

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