- 接合・溶接技術Q&A / Q07-11-01
-
Qシリーズアーク(ダブルアーク)が発生した場合の処理は,どうすればよいでしょうか。
シリーズアークとは,図1に示すように,電極と切断材間に流れる電流の他,チップを経由または他の部品等を経由して,別ルートで流れる電流が発生する現象である。このため,ダブルアークとも呼ばれている。
シリーズアークは,図1,2に示すごとく,トーチ先端部よりメインアークの光が青白く見える他,一瞬グリーン色した光が発生する。この光が発生した時は,シリーズアークが発生している。この光は,よく気をつけて見ていないと分かりにくいので,溶接用の面をつけ,アークをしっかり見ていなければならない。
チップ先端より,シリーズアークが発生すると,鋼材を切断できるだけの電流が流れるため,たとえ新品のチップでもほとんどの場合,溶損する。
シリーズアークが発生する原因を以下に示す。
(1) スパッタのはねかえり
特に,ピアシング時,アークスタート時に発生しやすい。ピアシング時は,溶融のノロ跳ね返りにより,スパッタがチップに付着し,その付着部分よりシリーズアークが発生する。
したがって,ランニングピアシングを用いたスタート方法を行い,スパッタの跳ね返りをなくすようにしなければならない。この現象がプラズマ切断では,一番多い。
(2) 水漏れ
電極およびチップを水冷している場合は,これらの取付部より水が洩れる場合がある。これらの場合も,シリーズアークが発生する。水漏れのチェックは,プラズマガスのみを出し,チップの下約20mmの位置にティシュペーパを置き,漏れがあるかどうか調べれば良い。水漏れがある場合は,機種により,Oリング等のシール材を使用している場合はそれらが傷んでいないか調べること。その後漏れ部の増す締めを行い,水漏れを完全になくしてからアークを出す必要がある。
空気を使用する場合は,乾燥空気を使用すること。一般の圧縮空気をそのまま使用すると,空気に水分が入っているため問題となる。
なお,電極,チップ等消耗品を交換した場合は,トーチ内部に水分やゴミが残るので,必ず水漏れチェックとガスパージを行うことが肝要である。
(3) 切断材と接触
接触式のプラズマを除いて,非接触式のプラズマ切断機の場合は,切断中切断材と接触した場合,または近接した場合にシリーズアークが発生する。したがって,プラズマ切断の場合は,特に高さ管理が必要である。
(4) ガス流量(圧力)
ガス流量が多すぎる場合は,パイロットアークの着火がしにくくなる。少ない場合は,シリーズアークが発しやすくなる。したがって,流量は,チップ径に合った適正な流量としなければならない。機械によっては,流量計で管理されず圧力計で管理されるものもあるが,圧力も流量と同じ関係であるので,メーカ指定の諸元表を参考として適正な設定が必要である。流量管理の場合は,入口圧力も関係するため,圧力と流量を適正値に設定する。
(5) その他
以上原因の他,下記項目も発生原因となる。
① 切断材質
切断材質によってもシリーズアークが発生しやすいものがある。鋼材,アルミニウムは比較的シリーズアークが発生しやすい。
② チップサイズ
使用電流に合ったチップを使用せず,小さいサイズのチップを使用した場合も発生する。したがって,チップサイズと電流が正しいかチェックを行う必要がある。
③ 電極の破損
電極が破損した状態で,アークを出した場合または破損した瞬間。
これらのすべてをチェックした後,まだシリーズアークが発生する場合は,機械の故障が考えられる。
〈中野 悦男〉