- 接合・溶接技術Q&A / Q08-05-02
-
Q時々,摩擦圧接と似た図があってイナーシャウエルディングというのを見ます。これは何ですか。
まず,摩擦圧接の原理を説明する。摩擦圧接は“摩擦”による発熱を積極的に利用するのが特徴である。図1は摩擦圧接の原理的方法を図解したものである。すなわち,①接合しようとする材料A,Bを接触させ,一定の加圧力(P1)と回転数(N)との機械エネルギーによってA,B接触面間に摩擦熱を発生させ,②両材料が適当な軟化状態になったところで回転運動を急停止(②→③)し,さらに,加圧力(P2)を与えることによって圧接を完了する。
実際には,ブレーキ式またはフライホィール式(イナーシャ式ともいう)の摩擦圧接機が設計・製作されている。イナーシャウエルディングは,後者である。
ここで,ブレーキ式とフライホィール式摩擦圧接の違いを述べる。図2はブレーキ式とフライホィール式の摩擦圧接サイクルを模式的に示したものである。それぞれ,回転数(N),摩擦圧力(P1),摩擦時間(T1)およびアプセット圧力(P2),アプセット時間(T2)が摩擦圧接因子である。以下,摩擦圧接因子はなるべく符号で記述する。
図2上段の①~③は,図1の①~③に対応して,およその時系列展開を示している。ブレーキ式は,P1工程からP2工程に移る際(②~③)に必ずブレーキを使うのでブレーキ式という。一方,フライホィール式は①~③の内容がやや異なる。すなわち,①材料Aの回転軸が所望のNを得た後,A,B間にP1を与えたまま,その駆動力を切り,②~③でNが低下する間に,P1とA軸に付けたフライホィールが持つ慣性エネルギー(E)とで摩擦熱を得て,③に至るので,T1は設定因子ではなく,P1やE,Nなどによって決まる値になる。また,A軸にフライホィールを備えているのでフライホィール式という。一般に,フライホィール式は,ブレーキ式より短時間に摩擦圧接が完了する特徴がある。なお,図2下段の寄り代は,図1の盛り上がりである「ばり」が生じた時のA,Bの材料の縮み量を模式的に示す。
以下では,ブレーキ式を主体にして述べる。
参考文献
1)(社)溶接学会:溶接・接合便覧,丸善(株),(1990)〈中原 征治〉