- 接合・溶接技術Q&A / Q08-05-07
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Q大変有効な接合法ということがよく判りました。実用化の際のチェックポイントは何でしょうか。
まず,どのような製品を製造するのかを明確にすることである。
一般に,市販の摩擦圧接機は,回転数Nが固定され,またP1・P2を実現する最大推力が決まっているので,必要能力を持つ摩擦圧接機を選定する。その際,炭素鋼のように実績の多い材料では,推奨条件(圧接条件の例:継手形式タイプ1~5はQ8-5-5の図1に対応)が公表されているので,それを用いて次の圧接因子(摩擦推力・アプセット推力,回転数)を実現できる能力を確認する。
① 製品の母材接合面形状とその断面積から摩擦推力・アプセット推力を算定する。
② 製品の母材接合面直径と推奨周速から回転数を算定する。
カタログの摩擦圧接能力値も有効な目安になるであろう。
これで,摩擦圧接機は決まるが,それから試験圧接で継手の評価をしてみる。
次に,実績の少ない材料では,摩擦圧接機のメーカ・経験者の知識・データシート等,既存の知識・データを利用して,摩擦推力・アプセット推力,回転数を計算して適用する摩擦圧接機を選定する。試験圧接には,炭素鋼より,時間と材料が必要かもしれない。
試験圧接結果が良好であれば,摩擦圧接条件すなわち因子の組合せ,回転数(N),摩擦圧力(P1),摩擦時間(T1),アプセット圧力(P2),アプセット時間(T2)が確定する。
さて,摩擦圧接因子は変動が少なく安定している。ただし,摩擦圧接機が充分管理されていることが前提である。それでも実用に際して注意したいことは,材料の管理である。
摩擦圧接は,摩擦圧接条件や材料が同一であることを前提にしている。このことがしばしば忘れられている。実用品は長期間にわたって製造されるのが一般であるから,生産に当たっては,圧接条件に多少の変動があっても,継手性能に変化を生じないことが望ましい。人為的に圧接条件を変化させて継手性能の変化を確認しておくのはこのためである。また,単純な鋼材でもロットが変わると,その都度,化学成分のチェックが欠かせない。さらに,供給される母材接合面の状態が同じでないといけない。そうでないと同じ摩擦圧接条件でも別物を作ることになり,お釈迦の原因になる。これは材料管理が必要なことを意味している。
参考文献
1)JIS Z 3607-1994(最終確認2010.10.10)〈中原 征治〉