接合・溶接技術Q&A / Q09-03-05

Q鉄筋突合せ継手の耐震性を評価する方法がありますか。また,溶接継手および機械式継手の耐震性能を教えて下さい。

兵庫県南部地震の際に,鉄筋のガス圧接継手が圧接部にて破断する事象が見られ,一部にガス圧接継手は地震荷重のような衝撃的な高速荷重には耐えられないのではないかとの懸念が表明された。そこでこの問題を把握するために,各種の試験条件のもとに作成したガス圧接継手に対して,耐震性評価方法として高速載荷試験が実施された。結果的には,適正な条件で圧接された継手は,地震荷重に十分に耐えるものと考えられている。ここでは,この結果を導くに至った2つの試験結果を紹介する。

まず最初の試験結果は,地震時の衝撃的な荷重の大きさから鉄筋継手へのひずみ速度の大きさがどの程度かについて調査し,高速載荷試験を実施している1)。いくつかの文献調査によると,地震時の材料が受けるひずみ速度は最大値0.1~10%/sであるとの報告から,これらのひずみ速度を参考にすると,ひずみ速度は10%/s程度を1つの目安として評価すればよい。試験はSD345,D32のガス圧接継手に対し実施した。結果の一例を図1に示す。静的引張試験(ひずみ速度は0.01%/s程度)と比べて高速載荷の場合,降伏応力が上昇し,伸びがやや低下する傾向にあるが,破断は写真1に示すように母材部であった。

次に,ガス圧接も含めて表1に示す各種継手に対して実施した試験結果を紹介する2,3)。突合せ溶接としてはエンクローズ溶接(NKE工法),およびフラッシュ溶接(NKF工法)である。また,機械式は,ねじ節2種,端部ねじ接合2種,スリーブ3種の計7種を試験した。鋼種,呼び名はSD345,D25である。載荷方法は,①静的引張試験(S),②ひずみ速度15%/sの高速載荷試験(H),③低温-40℃での高速載荷試験(LH),④塑性域の正負繰返し載荷試験(C)である。試験の結果はいずれの継手についても破断位置は,すべて鉄筋母材部であり,伸びもある延性的な破断であった。図2には,母材の静的引張試験による引張強さsBOに対する各種継手の載荷方法毎の降伏応力sy,引張強さsBの比を示す。降伏応力は常温での高速載荷(H)の場合は約10%強度が増加した。低温での高速載荷(LH)の場合はさらに約数%増加した。引張強さは,降伏応力ほどの増加率ではないが,常温・高速,低温・高速になると増加した。繰返し載荷の引張強さもわずかに増加した。これらの結果はほぼ鋼材の一般的な特性を示したといえる。

さらにこの試験では,ガス圧接継手については鉄筋呼び名を変化(D19~D51)し,総計370本の高速載荷試験を実施した。結果はD51の継手1本のみがフラット破面を起点に圧接界面で破断したに過ぎず,ガス圧接継手の健全性が確認された。

参考文献

1)宇佐美:ガス圧接継手の高速載荷試験,平成8年度圧接技術調査研究報告集,(社)日本圧接協会,pp.1-21,(1997)

2)森濱:高速載荷性能に及ぼす鉄筋継手諸条件の影響(中間報告),平成8年度圧接技術調査研究報告集,(社)日本圧接協会,pp.23-40,(1997)

3)森濱:各種鉄筋継手の高速・低温・繰返し載荷実験,平成9年度圧接技術調査研究報告集,(社)日本圧接協会,pp.73-103,(1998)

〈原沢 秀明〉

このQ&Aの分類

突合せ継手

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耐震性評価

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