接合・溶接技術Q&A / Q09-03-07

Q鉄筋突合せ継手に用いられているエンクローズ溶接の特徴,施工および検査での留意点を教えて下さい。

鉄筋のエンクローズ溶接(エンクローズアーク溶接の略称,以下EA)は,ロングレールの現地融接法から派生した接合技術であって,鉄筋の高強度化・太径化ならびに鉄筋工事の工業化工法の進展によって普及し,超高層・中高層RC住宅,沈埋函トンネル,RC高架橋,地下連続壁などの建設ならびに地震で被災したRC構造物の復旧工事に採用されている。

鉄筋のEA溶接には,①低水素系被覆アーク溶接棒を用いた手EA溶接法1),②炭酸ガスアーク溶接を用いた半自動EA法1)および③同溶接による自動EA溶接法2)とがある。

ここでは,現在の主力である②半自動EA溶接法について記す。

(1) 原理

鉄筋端面間に約10mmのI形開先を設け,その外側をU字形の銅当て金で囲み,1.2mmfのソリッドワイヤを用いてCO2溶接により開先底部よりアークをスタートし,鉄筋両端面に充分な溶込みを与えながら連続溶接して,開先内を溶接金属で充填する方法である。開先へのシールドガス(CO2)の供給は,耐風性を備えた特殊なガスフードを用いている。図1に原理図,写真1に溶接治具および鉄筋支持器をそれぞれ示す。

(2) 特徴

① 溶接中に鉄筋を引寄せる必要がなく,固定された鉄筋同志でも接合できるため,先組鉄筋の接合に適している。写真2および3に超高層RC造住宅の建設における先組み鉄筋溶接およびPCa部材の溶接状況を示す。

② 溶接時間はガス圧接の場合より短く,接合能率が高い(図2)。

③ 鉄筋接合端面は工場切断のままでよい。さらに,端面に赤錆が存在しても,溶接部は欠陥を生せず健全である3)

④ 冬期の低温下でも,鉄筋母材を予熱しないで溶接できる。連続溶接を用い,熱入力が大きい(約60kJ/cm)ため,母材初期温度が-10℃でも冷却速度は-20℃の場合とほぼ同一(t8/5=50S)で,母材溶接熱影響部の最高硬さも約HV235(母材:SD345-D32,%C+%Mn/6=046%)と低い値を示し,継手性能は母材と同等である4)

⑤ 降伏強度490N/mm2の高強度鉄筋を溶接しても,溶接部に欠陥を生せず,高い継手性能を有している。本法の継手性能はA級である。

⑥ 短所としては,EA溶接部の品質は溶接者の技量・知識に負うところが大きい。

(3) 施工・検査での留意点

① 雨・雪,風などの天候の影響を受けやすいので雨・雪については覆で対処しており,風は,5m/sまで通常作業が可能である。図3に示すとおり,CO2流量を増大させて,シールド効果を高めれば,最大風速10m/sまで施工できる5)

② 継手の開先間隔を適正に保持すること。規定寸法より狭い場合には,運棒が難しくなり溶接部に融合不良などの欠陥を生ずる恐れがある。

③ 継手の品質は非破壊検査で確認できる。
EA溶接継手には,ガス圧接部の検査の場合と同様に,斜角2探触子法を用いた超音波探傷検査が有効である。

参考文献

1)土木学会コンクリート委員会鉄筋継手工法小委員会:コンクリート・ライブラリー第55号,鉄筋継手指針(その2)―鉄筋のエンクローズ溶接継手―,(社)土木学会,(1984)

2)土木学会コンクリート委員会鉄筋の自動エンクローズ溶接継手小委員会:コンクリート・ライブラリー89,鉄筋の自動エンクローズ溶接継手設計・施工指針(案),(社)土木学会,(1997)

3)藤本盛久,高見昌博,矢部喜堂,姫野洋一,原沢秀明,森三郎:鉄筋半自動エンクローズ溶接(NKE法)の継手性能に関する研究(その4鉄筋端面の塩分・錆の影響),日本建築学会大会学術講演概梗集2823,pp.161-162,(1987.10)

4)藤本盛久,高見昌博,矢部喜堂,原沢秀明,森三郎:鉄筋半自動エンクローズ溶接(NKE法)の継手性能に関する研究(その5低温(-10℃)で溶接した場合の影響)日本建築学会大会学術講演梗概集2824,pp.163-164,(1987.10)

5)藤本盛久,上條直隆,高見昌博,矢部喜堂,中西啓二,森三郎:鉄筋半自動エンクローズ溶接(NKE法)の継手性能に関する研究(その3耐風性の検討),日本建築学会大会学術講演梗概集2822,pp.159-160,(1987.10)

〈森  三郎〉

このQ&Aの分類

突合せ継手

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エンクローズ溶接

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