接合・溶接技術Q&A / Q09-04-01

Q国家石油備蓄計画は1990年代後半には完了していますが,当時,地上式で標準的な容量11万k級大形石油貯槽の側板にはどのような鋼板が使用され,どのような溶接施工法が採用されていたのでしょうか。

図1は,国家備蓄用石油タンク標準形(容量11万k)の全体図である。径が約83m,高さが22mの浮屋根式円筒形タンクであるが,これを例として,タンク本体の材料と溶接を取り上げる。なお,石油タンクには,消防法が適用されている。

タンク本体は,底板,側板直下のアニュラ板,それに側板で構成されている。表1に使用鋼種と板厚,表2に主要な溶接方法を示す。

(1) 底板

板厚12mmのSS400(軟鋼)が使用されており,裏当て金付突合せ継手をサブマージアーク溶接(SAW)している。ここで注意することは,裏当て金の継ぎ目箇所での横割れ防止であり,この部分も溶接するのが通例である。

(2) アニュラ板

板厚21mmのSPV490Q(60キロ級高張力鋼)が使用されている。アニュラ板同士およびアニュラ板と底板の溶接は,底板と同じである。

(3) 側板

9段でできており,下7段がSPV490Q,上2段がSS400である。板厚は,最下段が34mmで最も厚く,上へ行くほど薄くなり,最上段が12mmになっている。溶接には,立継手と周継手に加え,アニュラ板とのT継手がある。

① 立継手

狭開先のエレクトロガス溶接(EGW)が主として適用された。EGWは,炭酸ガス雰囲気でアークを出す高能率立向自動溶接の一種である。高能率溶接であるが溶接入熱も大きくなるため,側板用には大入熱用のSPV490Q鋼が開発され適用された。調質鋼であるため,溶接入熱に許容限界があり,大入熱用鋼材を用いても,10万kJ/cm程度が上限のため,通常,板厚25mm未満は片側1パス,25mm以上は両側各1パスで施工されている。

② 周継手

横向SAWが適用されている。耐熱性がある回転ベルトでフラックスを受けて溶接するが,姿勢の関係で低入熱ビードの多パス溶接になる。特に厚板側では,固定ガスバーナ-や,溶接装置にカスバーナなどを取り付け,適切な予熱を行いながら溶接するなどの方法が取られ,低温割れ防止が図られている。

③ T継手

すみ肉溶接併用の部分溶込み開先溶接を細径ワイヤによるSAWで施工されている。また,この部位,特にタンク内側のアニュラ側止端は応力(またはひずみ)が集中するため,最重要箇所と認識されている。そこですみ肉の下脚を上脚よりやや長めとし,止端を滑らかに仕上げている。

これは,消防法が『部分溶込みグループまたはこれと同等以上の溶接方法による溶接とすること』また『溶接ビードは,滑らかな形状でなければならない』と規定していることによる。

参考文献

1)平成8年HPIセミナー,pp.122-123

〈河野 武亮 / 2012年改訂・片山 典彦[一部修正]〉

このQ&Aの分類

大型石油貯槽

このQ&Aのキーワード

溶接施工製品名:石油タンク材質:SPV490Q,SS400施工法:EGW,SAW他

Q&Aカテゴリ一一覧