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The Japan Welding Engineering Society

  

   

▼No.

Q09-04-09

 

▼小分類

完成検査

 

▼キーワード

耐圧試験

製品名:ボイラ・圧力容器

施工法:アーク溶接主体

 

 溶接技術教育シート
  (IIWシラバス)
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完成検査の1つとして,耐圧試験が行われます。加圧の方法により,水圧試験と気圧試験に分けられますが,一般に水圧試験が推奨されているのは何故ですか。どうしても気圧試験をしたいときにはどうすればよいのでしょうか。

  

  

JIS B 8270「圧力容器(基盤規格)」は2003年に廃止され,新たに,JIS B 8265「圧力容器の構造-一般事項」とJIS B 8266「圧力容器の構造-特定規格」に分けられた。JIS B 8265は旧JIS B 8270の「第2種圧力容器」および「第3種圧力容器」に相当しており,またJIS B 8266は,旧JIS B 8270の「第1種圧力容器」を一部修正の上,継承している。

圧力容器の耐圧試験は,完成試験あるいは開放検査後の安全性を確認するために,設計圧力を上回る圧力で行う実証試験(proof test)である。

圧力容器の耐圧試験に関してはJISB8265,及びJISB8266では以下に規定されている。

・JIS B 8265: 8.5 耐圧試験 附属書12(規定)圧力容器の耐圧試験

・JIS B 8266:11.6 耐圧試験 附属書17(規定)圧力容器の耐圧試験及び漏れ試験


さて,耐圧試験は,JIS B 8265,JIS B 8266とも水圧試験で行うことを原則としている。水圧試験圧力はJIS B 8265では設計圧力の1.5倍,JIS B 8266では設計圧力の1.25倍と規定されている。気圧試験は,下記の条件に限ってのみ適用可能としている。ただし,気圧試験圧力は,JIS B 8265では設計圧力の1.25倍,JIS B 8266では設計圧力の1.15倍と規定されている。


・気圧試験を適用してよい場合:

1) 水の存在が当該圧力容器の使用上許されない場合。

2) 水圧試験後の水抜きが完全にできない場合。

3) 水を満たす当該圧力容器,その支持構造などに不当な荷重,変形又は応力が発生するおそれのあるもので,その対策が実用的でないとき。

4) 水の入手が量的に著しく困難なとき。

5) 適切な水質の水入手困難なとき(オーステナイト系ステンレス鋼の場合は塩素イオン濃度など)。


耐圧試験は水圧試験を原則としているが,これは,耐圧試験中に万一破壊が発生すると,同じ圧力でも気圧の方が水圧とは比べられないほど大きな被害をもたらすためである。そこで,事例を2つ,発生順に取り上げ紹介するので,比較して見ていただきたい。


・耐圧試験時のぜい性破壊事故の事例

〔事例1〕

1968年に,780MPa級高張力鋼を用いた直径約16mの球形タンクの完成前耐圧試験で発生したものである。水圧で加圧中,最高圧の約90%に達した時点で破壊している。

破壊の状況は,図1にその概要を示した。発生点は下方温帯板の立継手(図のハッチを施した部分)のほぼ中央で,この継手の全長(約6.7m)が熱影響部を進むぜい性破壊である。最終的に破壊は球体の約3/4周に達しているが,ぜい性破壊している部分が一次破壊,それ以外は母材の延性破壊で,水とタンクの自重による二次破壊とされている。いずれにしても,比較的単純な壊れ方をしている。

〔事例2〕

1980年に,0.5Mo鋼とSUS405(13Cr-Al系)のクラッド鋼を用いた水添脱硫反応塔の気密試験中に発生している。17年目の定期開放検査を終え,触媒が充填してあるため窒素ガスで昇圧中,設計圧力の約85%(5.4MPa)で,突然破壊した。

破壊は,図2の破片地図に見られるように,粉々になる凄まじいもので,重さ約4.7tonの破片が105mも飛んだといわれる。図の●印付近で発生し,一瞬に伝播したぜい性破壊である。幸いにして人身事故はなかったが,周辺に多大な影響を与えている。


事例に示した壊れ方の違いは,エネルギーパワーの相違によるが,危険度の低い水圧試験を優先し,気圧試験に制限を設けている理由でもある。水圧試験を行うにしても,また前述した条件下で気圧試験を行う場合にしても,要は耐圧試験中にぜい性破壊を発生させないことが重要であり,そのためには溶接部を含むじん性の確保と切欠きの排除が重要である。じん性は,破壊力学による評価も行われているが,破面遷移温度(vTrs)を耐圧試験温度より低くする方法がとられている。簡単な方法であるが,問題なく広く利用されている。


参考文献

1)高圧力,Vol.7,No.5,p.2,(1969.9)

2)(社)日本機械学会:機械・構造物の破損事例と解析技術,p.153,p.155,(1984)

〈河野 武亮 / 2012年改訂・片山 典彦[加筆・一部修正]〉