接合・溶接技術Q&A / Q10-10-01

Q使用期間中,高張力鋼(590MPa級,690MPa級,780MPa級)溶接部に発生した疲労割れ,応力腐食割れの補修溶接について教えて下さい。

疲労割れ,応力腐食割れについては,以下に述べる要領で補修溶接を行う。なお,応力腐食割れの補修溶接の場合にはPWHTについて配慮しなければならない。

(1) 欠陥の除去と開先加工

グラインダーまたはアークエヤーガウジングにて欠陥を除去する。アークエヤーガウジングを使用した場合には,さらにグラインダーで仕上げる。熱影響による硬化層は1.6mm深さまでグラインダーで除去する。開先の長さは50mm以上とする。

(2) 予熱および層間温度

溶接部より150mm以上の範囲を表1に示す温度に予熱する。これは製作時の予熱温度よりも約50℃高くする。層間温度は予熱温度の範囲の中間とする。

(3) 溶接条件

溶接法は被覆アーク溶接法とし,低水素系高張力鋼溶接棒を使用する。溶接入熱は表1に示す通りとする。溶接棒の乾燥については表2に示す。

(4) 後熱

200~250℃にて30分以上の後熱を行う。

(5) 施工上の注意事項

① 溶接ビード長さは原則として50mm以上とする。

② アークスタート部は,図1に示すように本溶接開始点の約10~20mm前方(溶接方向)でアークを発生させた後,本溶接開始点に戻り,ここから本溶接を行う後戻り運棒法を採用する。

③ 運棒法は原則としてストリンガビードを採用する。

(6) PWHT

応力腐食割れ補修溶接部についてはPWHTを行う必要がある。PWHT温度は母材の焼戻温度以下,最低保持温度550℃とする。現地では局部PWHTとなり,かえって熱応力が溶接部に集中してより大きい残留応力が発生する恐れがある場合,PWHTの代替施工法としてハーフビード溶接補修法を採用する。この補修法の手順を図2に示す。この方法は,溶接熱によりHAZの焼戻しを行って硬さを低減し,延性および靭性を改善することができるが,残留応力の緩和は期待できない。そこで,さらに溶接中溶接部周辺領域をガスパネルヒータで加熱し,外側の温度勾配を緩和しかつ均一にして,局部的な加熱冷却による熱応力を少なくする方法を採用する。

参考文献

1)(社)日本溶接協会 化学機械溶接研究委員会 補修溶接信頼性小委員会:補修溶接施工法指針,(1987)

2)樋口,坂本,谷岡:石川島播磨技報,Vol.19,No.5,pp.244-249,(1979)

3)今川:溶接技術,Vol.23,No.11,pp.23-26,(1975)

〈清水 茂樹 / 2012年改訂[SI単位]〉

このQ&Aの分類

高張力鋼

このQ&Aのキーワード

疲労割れ,応力腐食割れ

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