接合・溶接技術Q&A / Q10-10-02

Q使用期間中,低合金耐熱鋼(Mo鋼,Cr-Mo鋼)溶接部に発生した焼戻脆化割れおよび水素侵食割れの補修溶接について教えて下さい。

低合金耐熱鋼溶接部は,350~525℃で長時間加熱すると靭性が著しく低下し,焼戻脆化割れが発生する。また,高温高圧水素雰囲気中では,水素侵入が起こり材質が劣化し,水素侵食割れが発生する。

これらの雰囲気下では,補修部の材質も劣化しているので,欠陥を除去しそのまま補修溶接を行うと溶接部に新しい欠陥が発生する。したがって,補修溶接の前に次の処理を行い,補修部の材質を改善する必要がある。

① 焼戻脆化材は,表1に示す温度で再PWHTを行う。

② 水素侵食材は,350~625℃加熱の脱水素処理を行う。

さらに水素侵食材については,脱水素処理後補修部の超音波探傷を行い,図12)に従って溶接の可否を決定する。図1は,水素侵食材の機械的性質と超音波探傷による最大エコー高さの関係を示したものである。水素侵食が進むに従って機械的性質は劣化し,超音波探傷による最大エコー高さが増大するので,超音波探傷により水素侵食の程度を検出することができる。

なお,水素侵食材の溶接の可否を決定する他の方法として,水素侵食材の顕微鏡観察を行い,脱炭が認められなければ脱水素処理により補修溶接が可能になるが,脱炭していると不可能である。

補修溶接は,各低合金耐熱鋼種と同一成分系の溶接材料を使用し,被覆アーク溶接またはTIG溶接で行う。予熱温度は表1に示す通りとし,300~400℃で数時間後熱を行った後,直ちに溶接部の表面を仕上げる。欠陥の除去および施工上の注意事項は,高張力鋼補修溶接要領(Q10-10-1参照)に準じて行う。

PWHTは表1に示す温度で行う。なお,溶接部の水素侵食割れは,PWHT温度が低過ぎると発生しやすいので注意しなければならない。

参考文献

1)吉田:溶接学会誌,Vol.60,No.2,pp.17-21,(1991)

2)吉田,若元,小林,白瀬:溶接学会全国大会講演概要,第40集,pp.186-187,(1987.4)

3)山崎,新川,槙本,大江:石油学会誌,Vol.19,No.1,pp.27-32,(1976)

4)三浦,大畠:化学工学,Vol.44,No.33,pp.136-140,(1980)

〈清水 茂樹 / 2012年改訂[SI単位]〉

このQ&Aの分類

低合金耐熱鋼

このQ&Aのキーワード

焼戻脆化割れ

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