- 接合・溶接技術Q&A / Q10-10-03
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Q使用期間中,オーステナイト系ステンレス鋼溶接部に発生した粒界腐食および応力腐食割れの補修溶接について教えて下さい。
粒界腐食および応力腐食割れは,HAZまたは溶接金属に発生する。これらの欠陥は,材料,溶接条件および溶接残留応力に起因する。応急的補修ではこれらの因子の改善は困難であり,再発の可能性が高い。したがって,補修溶接としては,欠陥部を完全に切離して新材料をはめ込んで行う恒久的方法と,局部的に欠陥を除去して行う応急的方法がある。
(1) 粒界腐食
新材料をはめ込んで補修溶接を行う場合は,新材料には強度上問題がなければ,HAZが鋭敏化され難いSUS316Lを使用する。TIGまたは被覆アーク溶接法を使用し,とくに旧材料の溶接部近傍は,銅板の当て金または水冷を行い,パス間温度150℃以下に保持して小入熱溶接を行う。しかし,図11)に示すように母材の厚さが薄い場合には,融合線近傍が鋭敏化温度に加熱される回数が多くなり,耐粒界腐食性が低下する。したがって,入熱量とパス数について配慮する必要がある。
局部的補修の場合は,欠陥はグラインダーにより研削し,PTにより完全に除去されたことを確認後,TIGまたは被覆アーク溶接法を使用し,新材料をはめ込んだ補修溶接に準じて行う。
(2) 応力腐食割れ
応力腐食割れを防止するためには,溶接後腐食環境下にある面の溶接残留応力を圧縮応力に変える必要がある。この対策の一例として,現地で容易に施工できる水冷却溶接法を使用する。
新材料をはめ込んで補修溶接を行う場合は,まずTIGまたは被覆アーク溶接法を使用して2層または3層溶接を行う。その後,図21)に示すように溶接部裏面をスプレーで冷却しながら溶接を続行する。この方法により内面の残留応力が圧縮応力に変化した状態を図32)に示す。なお,応力腐食割れは,環境腐食液によりHAZの粒界腐食から発生する場合がある。しかし,水冷却溶接法を使用することによりHAZの鋭敏化域が著しく減少し,耐粒界腐食性が向上して応力腐食割れが発生し難くなる。
局部的補修の場合は,欠陥を完全に削除後,TIGまたは被覆アーク溶接法を使用し,溶接部を冷却しながら溶接を行う。補修溶接後,補修部の反対側から底部の2~3層を残して溶接金属を削除し,水冷却溶接を行う。



参考文献
1)應和,田中:ステンレス鋼溶接の実際,産報出版(株),pp.162-167,(1983)2)桐原,今井,正岡,佐々木:溶接学会誌,Vol.48,No.10,pp.18-29,(1979)
〈清水 茂樹 / 2012年改訂[SI単位]〉