- 接合・溶接技術Q&A / Q10-10-04
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Q使用期間中,オーステナイト系ステンレスクラッド鋼(クラッド材:オーステナイトステンレス鋼,母材:Mo鋼,Cr-Mo鋼)クラッド材溶接部に発生した腐食および応力腐食割れの補修溶接について教えて下さい。
クラッド材溶接部に発生した浅い腐食などの欠陥は,グラインダーにより研削し,PTにより完全に除去したことを確認後,クラッド材と同一成分の溶接材料を使用し,小入熱で溶接を行う。PWHTは行わない。
クラッド材溶接部に発生した応力腐食割れは,母材に進展することが多い。この欠陥を補修溶接する場合は,溶接を容易にするために,図1に示すように欠陥,クラッド材および溶接金属を削除する。削除面にオーステナイト系ステンレス鋼の溶接金属,クラッド材が残留すると,母材補修溶接の際,溶接金属が異常に硬化する。硫酸銅試薬(硫酸銅10%,硫酸3%,蒸留水87%)を削除面に塗布すると,残留していない場合は銅色に変色する。
母材側の補修溶接は,同一成分系の溶接材料を使用し,0.5Mo鋼は100~200℃,1~1.25Cr-0.5Mo鋼は150~300℃の予熱を行って施工する。補修溶接部に余盛が残留すると,クラッド側補修溶接の際,オーステナイト系ステンレス鋼溶接材料の母材による希釈が大になるために,余盛を母材切削面まで平滑に仕上げる。
クラッド側の補修溶接は,表1に示すように母材による希釈を考慮して,1層目はNi量の高い309L系溶接材料を使用するが,2層目以降はクラッド材と同一成分系の溶接材料を使用する。原則として下向溶接でストリンガービードを使用する。境界部の1層目の溶接は,母材溶接の場合と同様の予熱を行い,低電流でアーク長を短く保ち,母材の希釈をできるだけ少なくする。2層目以降は層間温度を100℃以下とする。
PWHTは,0.5Mo鋼については590~600℃,1~1.25Cr-0.5Mo鋼については590~620℃の温度で行う。ただし,クラッド材が低炭素オーステナイト系ステンレス鋼および安定化オーステナイト系ステンレス鋼以外のものは,この処理を避ける。なお,溶接部の組織を改善するハーフビード法(Q10-10-1の図2参照)で母材の補修溶接を行うことにより,PWHTの代替とする場合もある。


参考文献
1)(社)日本溶接協会 化学機械溶接研究委員会 補修溶接信頼性小委員会:補修溶接施工法指針,(1987)2)(社)化学工学協会:補修溶接シンポジウム資料,pp.55―64,(1985)
3)ステンレス協会:ステンレス鋼溶接施工基準,pp.195―201,(1988)
〈清水 茂樹 / 2012年改訂[規格]〉