接合・溶接技術Q&A / Q11-01-02

Q溶接や焼入れ,切断などの熱加工プロセスでは,熱源のパワー密度と加熱時間が重要な因子とされていますが,どのような考え方によるのでしょうか。

熱源のパワー密度(エネルギー密度)q(W/m2)は,溶接・熱加工部の相状態を変え,熱輸送形態に大きく影響を及ぼす。熱源のパワー密度と相変化との関係をおおまかにつかむため,固体表面にq(W/m2)の熱流束が与えられたときの表面付近の温度,相状態を熱伝導論をもとに考える。図1に示す母材(半無限固体)内での熱の流れは,次の1次元熱伝導方程式で表現できる。

 

T

k

2T

(1)

t

z2

 

ここでT:温度(K),k(=l/cr):温度伝導率(m2/s),l:熱伝導率(W/mK),c:比熱(J/kgK),r:密度(kg/m3)である。

母材表面(z=0)に熱源から流入した熱流束は,そのまま熱伝導で母材内部に輸送されるので,深さ方向の温度分布は表面での境界条件として,次式のもとで(1)式を解けば得られる。

 

(2)

 

図2に示すように,温度は母材表面で最も高くなり,無次元距離()が2で,温度上昇はほぼゼロとなる。言い換えると,熱源による加熱時間をtp(s)とすると,熱拡散距離=(m)となり,母材に与えられた総熱量はDp内にほぼ含まれる。したがって,熱源から流入した総熱量が溶融に必要な熱量を超えれば,母材表面は溶融することになる。次の(3)式と(4)式は,このような考え方に基づいた溶融条件と蒸発条件である。

 

qtp

r{c(TmTo)+Lm}

(3)

Dp

 

qtp

r{c(TmTo)+Lmc(TbTm)+Lv}

(4)

Dp

 

ここで,Tm:融点(K),Tb:沸点(K),To:母材の初期温度(K),Lm:溶融潜熱(J/kg),Lv:蒸発潜熱(J/kg)である。(3)(4)式を用いて,ステンレス鋼(SUS304),アルミニウムおよび銅について計算した結果を図3に示す。例えば,ステンレス鋼の場合,加熱時間100msにすると,4×109W/m2以上のパワー密度の熱流束を与えると,表面から深さDp=0.046mmの領域が溶融することになる。もとより,加熱時間を長くすると,必要なパワー密度は低くてよいことになる。銅に比べて熱伝導率の低いステンレス鋼や融点の低いアルミニウムは,溶けやすいことがわかる。

〈平田 好則〉

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エネルギー加工の基礎

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パワー密度

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