接合・溶接技術Q&A / Q11-02-26

Q溶接棒はなぜ乾燥させる必要があるのですか。

乾燥の目的は,被覆に吸着した水分を除去することにより,①割れ,ブローホールなどの欠陥発生を防止し,②溶接作業性の劣化を防止することである。

溶接棒の被覆は,粒子の形状や大きさの異なる種々の粉体原料(酸化物粉,金属粉等)からなっているため,被覆は多孔質でその表面積は非常に大きい。そのため,特に高温多湿の雰囲気に放置した場合,細孔内部や表面に水分が吸着する。吸着した水分は,高温のアークにさらされると分解して原子状の水素と酸素となり,溶着金属の拡散性水素を増加させるとともに,溶接作業性に悪影響を及ぼす。

(1) 低水素系溶接棒

低水素系溶接棒は溶着金属の拡散性水素量が低いため,水素による低温割れ防止の目的で厚板や高張力鋼,低合金鋼の溶接に用いられている。

しかしながら,溶接棒の水分吸着(吸湿)は,図1に示すように拡散性水素の増加をもたらし,鋼溶接部の低温割れ感受性を高める。参考文献1では,軟鋼,490N/mm2級高張力鋼用溶接棒の場合,グリセリン置換法による拡散性水素量5ml/100gを目安とすると,被覆の許容吸湿水分量は0.5%程度としている。

低水素系溶接棒の管理にあたっては,溶接材料メーカーの推奨条件を参照すべきであるが,350~400℃で1時間程度乾燥し,100~150℃で保管することが一般的である。

なお,吸湿が0.5%を超えるとスパッタが増加し,アークが不安定になるといった溶接作業性の劣化も生じる。

(2) 非低水素系溶接棒

非低水素系溶接棒は,拡散性水素量がグリセリン置換法で25~30ml/100gと低水素系溶接棒に比較してかなり高く,水素による低温割れが懸念される部材の溶接には使用すべきではない。

この系の溶接棒の場合,吸湿は溶接作業性および機械的性質の劣化を引き起こすことが多い。イルミナイト系溶接棒の場合,3%以上の吸湿でスラグの被りが不安定となり,ビード外観が劣化する。また,アークが不安定になりスパッタが増加する。さらに,3%以上の吸湿で伸び,絞りなどの延性が低下する傾向も認められる。

乾燥を必要とする水分吸湿の限界値は,被覆系により異なるが約2~3%とされている。

〔参考〕

鋼溶接部の水素量測定方法は,JIS Z 3118規定されているが,①ガスクロマトグラフ法,②グリセリン置換法とがある。水銀法(IIW法)も含めた換算法は,

 

HGC=HIIW=(HGL+1.73)/0.79

 

ここで,

HGC

ガスクロマトグラフ法により求めた溶着金属当たりの水素量(ml/100g)

HIIW

水銀法により求めた溶着金属当たりの水素量(ml/100g)

HGL

グリセリン置換法で求めた溶着金属当たりの水素量(ml/100g)

参考文献

1)(社)日本溶接協会:WES 2302-1995「溶接材料の管理指針」

〈本間 弘之〉

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溶接棒

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