接合・溶接技術Q&A / Q11-03-01

Q溶接作業場の環境改善に対する工学的対策について教えて下さい。

溶接作業場の環境改善には,通常3つの対策がとられている。全体換気,局所排気およびプッシュプル換気の各方式による対策である。特に造船,橋梁および建築製造工程のように,より広い屋内溶接作業場などでは,1つの方式だけの改善ではなく,全体換気と他の方式が併用されて,より環境改善効果を上げている場合もある。今回は,これらの方式に関する対策について述べる。

(1) 全体換気方式

溶接作業は常に固定された作業場所が少なく,絶えず移動を伴う場合が多い。したがって,環境改善の第一の対応策として,全体換気が不可欠となる。全体換気とは,アーク溶接作業の電極から発散する有害なガスおよび粒子状物質(ヒューム)などの汚染物質が作業場内に拡散した後,その汚染空気の一部を作業場内から排出し,新鮮外気を供給することによって,作業場内汚染空気の濃度を管理濃度以下に希釈する方式である。全体換気には,自然換気と強制換気があるが,溶接作業場では,主に機械力を利用して強制的に行う強制換気が用いられている。

しかし,強制換気は計画的な換気量を得ることができるが,汚染物質の作業環境空気中濃度を一定レベル以下にすることは,技術的にも経済的にも困難な場合がある。さらに,全体換気は設置しても効果が少ない,騒音が大きい,設備・運転コストが高い,冷暖房効果が失われるなどの問題点も指摘されている。

(2) 局所排気方式

アーク溶接作業の電極から,ある速度をもって発散する有害なガス・粒子状物質(ヒューム)は,周囲の作業環境空気中へ飛散・拡散による混合分散する前に,できる限り高濃度の状態で局所的に吸込み気流により捕捉制御し,さらに,その汚染空気を空気清浄装置により清浄化して大気へ放出するシステムが局所排気方式である。溶接作業場で用いられている局所排気システムには,定置式と可搬式とがある。定置式には,ガスおよびヒュームの発散源が完全な囲いの中にあり,一面が溶接作業のために開口となっているブース型と発散源がフードの開口面の外側にある外付け型とがある。小物の溶接作業には,ブース型が排気効果もよく最適と思われる。

また,可搬式には,ヒュームコレクターとしてフレキシブルアームに取り付けたフード吸引型と溶接用トーチの近傍に取り付けたノズル型がある。このヒュームコレクターは,溶接作業のように発散源が移動する場合に,装置1台当たりの単価が比較的安く,集じん効率も高い点で優れている。

(3) プッシュプル換気方式

プッシュプル流れによって発散する溶接汚染物を周囲に拡散させることなく吸込み開口付近まで導き,これらのすべてを吸込み開口で吸引・排出するシステムがプッシュプル換気方式である。プッシュプル換気方式には,開放型,密閉型および遮断型があり,一般に開放型が溶接作業場で最近広く用いられはじめている。

開放型のプッシュプル換気の設計には,その構造と性能要件を満たされていなければならないが,しかし,その設計手法が確立されているとはいえず,多分に経験に頼っているのが現状である。過去に流量比法による設計法が提示されたが,指数計算を含み,計算が複雑で一般的に受け入れ難い原因の1つと思われる。さらに,プッシュプル換気方式は,吹出し・吸込み開口における風速の一様性とその方向性が重要となる。この一様性と方向性が十分満たされていないと,溶接汚染空気を周囲に拡散させる結果となるので注意が必要である。

〈岩崎  毅〉

このQ&Aの分類

安全・衛生

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作業場の環境改善

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