接合・溶接技術Q&A / Q11-03-03

Q狭あい環境における溶接作業の注意事項および対策について教えて下さい。

(1) 有害物質の発生

アーク溶接作業時に発生する有害物質による障害防止の中で,ヒュームによる障害防止対策が最重点とされている。CO2アーク溶接時のヒューム発生量は,被覆アーク溶接に比べて多い。また,アークは強い紫外放射(紫外線)を発生する。この紫外放射によって,異物感,眼痛,差明,流涙,結膜充血などの症状とする紫外眼炎を発生する。特に,狭あい場所(貯槽,タンク,般倉,橋梁箱桁などの内部)では,CO2アーク溶接におけるシールドガスのCO2が遷元され発生するCO,アークの高温によって空気中のN2が酸化されて,生じるNO2,アークからの紫外放射によって発生するO3などが溶接作業環境を著しく悪化させる。また,狭あい場所での溶接作業は,シールドガスや発生ガスによる空気の希釈による酸素濃度の低下,酸素濃度の低下などによって酸素欠乏空気の発生が懸念される。酸素欠乏症は最も死亡率の高い危険な障害である。「酸素欠乏症等防止規則」(昭和47年,労働省令第42号)では,最低酸素量を18%と規定している。

表1に,これらの有害物質の許容濃度などを示した。

(2) 対策

① 作業環境の有害物質濃度の測定

作業環境で発生する有害物質の濃度および分布を作業環境測定基準1)に従って測定し,その結果から作業環境評価基準2)によって,単位作業場所の作業環境管理の良否を判断し,管理区分を決定し,どのような対応を採るかを決め,実施する。この際,管理濃度が指標となる。

なお,実際の作業環境測定には,JIS Z 3950「溶接作業環境における粉じんの濃度測定方法」およびJIS Z 3952「溶接作業環境におけるガス濃度測定方法」を参照されたい。

② 狭あい場所での換気

換気装置には,全体換気装置,局所排気装置,プッシュプル型換気装置などがある。

狭あい場所での溶接作業は,ほとんどが手動溶接になる。したがって,換気は局所排気装置によるのが一般的である。しかし,局所排気装置の稼働要件の1つである制御風速を満足させようとすると,溶接部の品質を損ねる危険性があり,制御風速を低く設定することになる3)

それには,法令上,溶接作業者は呼吸用保護具を着用しなければならない。

③ 呼吸用保護具

前述のように,局所排気装置の使用が必要条件になるが,稼働条件を緩和せざるを得ない場合が多々ある。そこで,呼吸用保護具の着用が常態となる。

呼吸用保護具には,ろ過式(防じんマスク)と吸気式(送気マスク)とがある。狭あい場所における溶接作業では,酸素欠乏状態や発生する有害物質が明らかでない場合がある。このような場合は,ろ過式の呼吸用保護具は使用できないので,送気マスクの着用が必要となる。

参考文献

1)労働省告示第46号制定,昭和51年,労働省告示第73号改正,平成4年

2)労働省告示第79号制定,昭和63年,労働省告示第26号改正,平成7年

3)(社)日本溶接協会 溶接棒部会技術委員会:溶接の研究,No.34,(1994)

〈磯部 満夫 / 2012年改訂[字句修正]〉

このQ&Aの分類

安全・衛生

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狭あい環境での障害防止対策

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