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プラント圧力設備の溶接補修

第2回 溶接補修方法

2.2 きず除去と肉盛補修

(1)きず除去

対象とするきずの幾つかの例を図3に示すが、既に述べたとおり供用中の検査によって検出された圧力設備の母材や溶接部に生じた割れや局部減肉部などのきずである。また、製作時に起因したと思われる溶接部のきずについても対象とする。ただし、広範囲にわたる水素誘起割れなどの場合は適用外とする。

図3 対象となる主なきずの種類

検出されたきずは適切な除去方法を用いて原則として全て除去する。ただし、何らかの理由からきずを残す場合は、供用適性評価(FFS評価)を行い、安全であることを確認することが必要である。具体的なFFS評価手法は、HPIS Z1011)、API 579-1/ASME FFS-12)およびFITNET(European Fitness-For-Service Network)のMK83)などで、所有者と合意を得ることが必要である。

きず除去部の残存厚さが、将来腐れ代を考慮して必要最小肉厚以上であればそのまま継続使用することができるが、その場合には目視検査(VT)に加えて磁粉探傷試験(MT)あるいは浸透探傷試験(PT)などの適切な非破壊検査を行いきずが完全に除去されたことを確認し、その後に図4に示すとおり、きずを除去した領域の幅/深さ比が3:1 以上でかつ滑らかな形状とし応力集中を軽減する。

図4 きず除去後の形状

きずの除去方法の選択に関しては、そのきずの種類、位置、母材、溶接材料の種類によって、グラインダ、機械切削あるいは砥石などによる機械的なきずの除去方法を用いるか、あるいはガウジングなどによる熱的手法なきずの除去方法を用いる。合わせて、機械的なきずの除去方法を採用する場合においては、高い残留応力発生の問題あるいは炭素鋼や低合金鋼に用いた切削工具を他の材料に用いたときの亜鉛脆化の問題や、熱的方法を用いた際の熱影響部の除去方法とその範囲などについても示した。

また、きずの除去後の肉盛り溶接補修のことを考慮し、特に複数のきずが存在する場合には、図5に示すような欠陥除去により、溶接補修による残留応力を出来るだけ低減することが望ましい。

図5 複数のきずが存在する場合のきず除去部の形状(肉盛り溶接実施)

供用中に脆化が生じた材料の割れの除去作業を実施する際には、割れ進展防止方法の一つとして図6のとおり、ストップホールを設置後することが推奨される。

図6 ストップホール設置例

(2)肉盛り溶接補修

肉盛り溶接補修を行う際には、対象材料あるいは使用環境を考慮することが必要である。

・ フェライト系材料の予熱温度とその範囲
・ フェライト系材料のショートビードに関する制限と多層盛り
・ 溶接補修前の脱水素処理の要否
・ オーステナイト系ステンレス鋼の高温割れ対策

また、フェライト系材料の肉盛溶接では、硬化性の高い鋼材での低温割れの防止、オーステナイト系ステンレス鋼では高温割れおよび応力腐食割れ防止に留意することが重要である。

肉盛り溶接補修後における非破壊検査に関しては原則としてMTまたはPTとするが、肉盛り溶接補修深さがある一定の条件を越えた場合は、MTまたはPTに加え超音波探傷試験(UT)あるいは放射線透過試験(RT)による内部検査が必要である。

肉盛り溶接補修後の溶接後熱処理(PWHT)の要否、実施方法ならびにPWHTの代替方法における特記事項は以下のとおりである。

・ PWHT保持時間の算定には、肉厚に代えて肉盛り溶接補修深さにて決定可
・ PWHT代替法適用に対する環境ならびに鋼種の制限
・ PWHTの代替法の一つであるテンパービード法(図7参照)の規定
・ PWHT後の非破壊試験や硬度に関する規定

図7 テンパービード法

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本稿は,日本溶接協会誌「溶接技術」2010年8月号に掲載されたものです。

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