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アーク溶接作業の安全と衛生
(最終回)

9. 熱中症対策

9.1.1 熱中症の原因

熱中症は,主に外気の高温・多湿などが原因で発症します。

人の体は,運動及び営みによって常に熱を産生していますが,一方では,異常な体温変化を抑えるための効率的な調整機構も備わっています。

体温よりも気温が低ければ,皮膚から空気中へ熱が移行しやすく,体温の上昇を抑えることができ,湿度が低ければ,汗をかくことで熱が奪われ,体温を適切にコントロールすることができます。しかし,夏場などのように外気の温度が高くなると,人の体は自律神経の働きによって抹消血管が拡張し,皮膚に多くの血液が集まり,外気への熱伝導によって体温を低下させようとする機能が低下して,熱の放出が困難となって,体温調節は発汗だけに頼ることになります。

ところが,気温が著しく高く,しかも湿度が70%以上になると,汗をかいても流れ落ちるばかりでほとんど蒸発しなくなります。そのため,発汗による体温調節すら事実上できなくなってしまいます。また,体温が37℃を超えると皮膚の血管が拡張し,皮膚の血液量を増やして熱を放出しようとしますが,このとき体温がさらに上昇するため,発汗などによって体の水分量が極端に減り,その後は,心臓や脳を守るために血管が収縮しはじめます。つまり,ここでも熱が放出できなくなってしまいます。

このように,人の体内では血液の分布状況が変化したり,汗によって体から水分や塩分が失われるなどの状態になったりします。その変化に対して,私たちの身体が適切に対処できなければ,熱の産生と放出とのバランスが崩れることになり,体温が著しく上昇してしまいます。このような状態を熱中症といいます。

熱中症は,ほぼ,表9.1の4種類に分類されています。

表9.1 熱中症の種類

種類 原因 症状 治療
熱失神 直射日光の下での長時間行動や高温多湿の室内で起る。
発汗による脱水と末端血管の拡張によって,脳への血液の循環量が減少した時に発生する。
めまいがして,突然,意識を消失。
体温は正常であることが多く,発汗が見られ,脈拍は徐脈を呈する。
輸液と冷却療法を行う。
熱疲労 多量の発汗に水分・塩分補給が追いつかず,脱水症状になったときに発生する。死に至ることもある熱射病の前段階ともいわれ,この段階での対処が重要。 たくさんの汗をかき,皮膚は青白く,体温は正常か,やや高め。
めまい,頭痛,吐き気,倦怠感を伴うことも多い。
輸液と冷却療法を行う。
熱けいれん 汗をかくと,水分と一緒に塩分も失われる。血液中の塩分が低くなり過ぎて起る。水分を補給しないで活動を続けたときはもちろん,水分だけを補給したときにも発生しやすい。 痛みを伴った筋肉のけいれん。
脚や腹部の筋肉に発生しやすい。
食塩水の経口投与を行う。
熱射病 水分や塩分の不足から視床下部の温熱中枢まで傷害されたとき,体温調節機能が失われて生じる。 高度の意識障害が生じ,体温が40℃以上まで上昇し,発汗は見られず,皮膚は乾燥している。 極めて緊急に対処し,救急車を手配する必要あり。


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