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極低スパッタ炭酸ガスアーク溶接技術
“J-STAR® Welding”について

JFEスチール株式会社
スチール研究所 接合・強度研究部
片岡時彦

1. はじめに

炭酸ガスアーク溶接は国内で用いられているアーク溶接全体の30%を占める主要な溶接法であり、鋼を加工するさまざまな分野で使用されている。しかしながら、炭酸ガスアーク溶接における自由溶滴移行領域では溶接時に多量のスパッタが発生する。これを要因とする品質トラブルや付加作業が発生しており、スパッタの低減による溶接作業性の改善が課題とされている。これまでにも溶接アーク現象に及ぼすワイヤ組成の影響に関する研究が報告され、炭酸ガスアーク溶接においては電極であるワイヤ中のC量低減とTi量増加による短絡抑制がスパッタ低減に有効である、また、ワイヤにK添加した低スパッタ溶接用ワイヤおよび高周波パルス炭酸ガスアーク溶接法を開発し、より一層の低スパッタ化が可能であることを報告されているがこれらの方法ではスパッタの低減は必ずしも十分であるとはいえない。

本技術では、炭酸ガスアーク溶接においてスパッタの発生を極めて低減し、かつ、これまでにない高能率アーク溶接を実現した。炭酸ガスアーク溶接法は、アークを比較的安定して維持できることから逆極性溶接(ワイヤがプラス極)が適用されてきた。しかし、炭酸ガス特有のアーク緊縮によって大きく成長した溶滴(ワイヤ先端の溶融金属)が揺れ動くことで、スパッタが多発する。これに対し、本開発では、正極性溶接(ワイヤがマイナス極)における陰極点制御技術の開発に取り組んだ。その結果、REM(希土類金属)を適量添加したワイヤを用いることで世界で初めて炭酸ガスアーク溶接の溶滴微細化「スプレー移行」の実現に成功し、極低スパッタ化(従来比1/10)を達成した。

2. 炭酸ガスシールドアーク溶接の現状

シールドガスはアークプラズマ源になるとともに、溶融池(アークにより溶融した鋼板部分)を大気から保護する目的で用いられる。また、溶接アークが比較的安定化することで溶け込み確保がしやすいとの観点から、逆極性溶接(ワイヤをプラス極、鋼板をマイナス極とする溶接)が用いられている。

図1に炭酸ガスアーク溶接の構成と溶接の状況を示す。中央の白い部分がアークであり、青白く立ち昇るのがヒュームである。さらに、アークから周囲に向かって発光する飛散物がスパッタである。このように炭酸ガスアーク溶接では溶接時に多量のスパッタが発生する。スパッタは、シールドガスノズル、溶接部およびその近傍に付着し溶接欠陥の要因となる他、後工程の塗装欠陥の要因でもあり、除去には多大な工数を要するため、その削減が要望されている。

図1 炭酸ガスアーク溶接の装置構成と溶接の状況


(WE-COM会員のみ)